Dr. Tashiro のマジックレポート (No.6)

デビッド・カッパーフィールド2001大阪公演

 日時:2001年7月20日(金) 15:30開場 16:30開演
 会場:大阪城ホール


はじめに

午後3時30分開場、午後4時30分開演。2年前と同じように、猛暑の中、汗をかきかき会場着。会場入り口の特設テントで記念グッズの販売をしていた。プログラムは前よりも500円安くなって2000円。ビデオ4000円。その他、カード、携帯電話のストラップなど。

ステージは黒で統一されており、下手には2台のサーチライトが置かれ、ぐるぐると動きながら会場内を照らしている。上手側には1台の投影機が置かれ、これにより、リング状の光線が会場内を動き回っていた。5000人収容の会場はあっという間にほぼ満席となった。16:30場内アナウンス。撮影・録音の禁止、携帯電話等の電源を切ること、場内での喫煙・飲食の禁止について、注意が促された。4:35、通訳の「リョウ」氏登場。ショーの途中で使う、Moon: Interactive
Experienceの、「月のカード」に関する説明。(カードを切りとってすぐに使えるように。)4:40、「もうしばらくお待ち下さい。」とのアナウンス。ほどなくステージに並んだ4つの照明が客席に強い光を放ち、この4つの照明を挟むように置かれた強力な2台のライトがステージ状に「X」を描くように光を放っている。音楽が一段と高鳴り、ショーが始まる前の独特の興奮が体を貫く。

1.バイクとカッパーフィールド氏の出現

トラックに積むコンテナほどある大きな白い箱。不規則に鉄のワイヤーがかけられている。箱の全面がスクリーンになっており、そこに宇宙をイメージする映像が投影される。文字が浮び、それを読み上げるナレーションが入る。「あなたは信じられますか?一瞬にして、地球の裏側へ移動できるというイリュージョンを。学校や会社は毎日同じことの繰り返し・・・トラブルに直面したとき、目を閉じて、そうしてひらくだけで、自分が憧れる南の島へワープできるとしたら・・・あなたは信じられますか?」といったような内容。背景はブルーのカーテン。

4人のスタッフが箱の4すみに立っている。前の2人が女性で、手に2mくらいの棒を持っている。先端にはライトがついている。箱をぐるっと1回転させる。全面のスクリーンとして使われた面を客席側に倒して、中がカラであることを示す。女性は箱の後ろにライトを持っていき、異状がないことを示す。ライトが後の壁ごしに光っているのが見え、怪しいところはない。前の面(スクリーン)を元通りにすると、スクリーンには人間の手が映る。次第に人間の体が映り、大型バイクまでが映し出される。全面が再び客席側に倒されると、中には大型バイクとデビッド・カッパーフィールド氏が現れている。

感想:

必ずしも新鮮なイリュージョンではないけれど、箱を「スクリーン」として巧みに利用して、今回の目玉イリュージョン「ビーチ」のイントロを提示し、ショー全体のイメージを効果的に観客に印象づけることに成功していた。

2.Thumbs

「コンニチハ!」と日本語で挨拶。通訳に教えてもらいながら、「カンペキナニホンゴヲハナシマス。」などと日本語で語り、観客を喜ばせた。「今日ハ1秒デ、地球ノ反対側ヘ行ッテシマイマス。」

手をひねって指を組む。瞬間的に手のねじれはとれ普通に「キリスト教のお祈り」のときの手になる。子供の頃にみんなでやって遊んだのと同じ。みんなでご一緒に!といった感じで観客に手を前に出させる。そしていっしょに同じことをやらせるのだが、観客はできない。明るくフレンドリーに演じた。

ここでバックの黒幕の隙間からアヒルが出てくる。当惑した顔をして下手袖に抱いて連れていく。

優しい音楽が流れ、カッパーフィールド氏は語りかける。「小さな島をイメージしてみて下さい。そこでは誰もが幸せで、学校や職場でのトラブルとも無縁な土地なのです。思ってみて下さい。本当に目を閉じてイメージするのです。(ここでスクリーンが上から降りてきて、スペインの小島「イリーザ」の映像が流れる。上空から撮ったビーチの映像である。)この島に一瞬にして移動して見せます。但し、後で。」

感想:

前回と同様の順番で同様の演目。よく知られたものだが、観客は一様に驚いていた。一度、観客と同時に手を組んで、一旦離し、「親指は下ですよ!」というミスディレクションをかけながら改めて手を組むところは、さすがであった。

3.鉄板の貫通

さらに話は続く。スクリーンは再び引き上げられ収納される。「不可能なことを可能にするという『夢』について、お話しましょう。私はかつて万里の長城を通り抜けるというイリュージョンを行いました。もちろん、垂直方向にですよ。壁と水平に通りぬけたら大変な時間がかかりますからね。・・・たとえば厚紙と氷があるとしましょう。氷は厚紙の上に乗っています。氷は溶けると紙を通りぬけます。通りぬけた水が再び凍れば、氷が厚紙を貫通したように見えます。・・・人間も80%は水で出来ています。万里の長城はここまでもって来れませんから、これをもってきました。こんなものを通りぬけられるのはドラマ『アリーマイラブ』のアリー・マクベルくらいなものでしょう。」

4人の男性スタッフが、1m×2mくらいの鋼鉄の板を上手から運んでくる。これを客席へ持っていく。客席でも多くの観客にその板を調べさせた上で、2人の観客とともに、再びステージに戻る。カッパーフィールド氏はステージ上で指示をしている。

「ここに4人の野獣がいます。」と言って、4人の男性スタッフを1人ずつ紹介する。あらためて、鉄板を調べてもらった上で、自分はステージ中央のベッドに横たわる。高さは1mくらい。ベッドにかぶさるように一回り大きな金属の枠が組んであり、この上に鉄板を載せる。(寝ているカッパーフィールド氏のすぐ真上に鉄板が置かれることになる。)

次に、ベッドと枠に黒いビニールシートをかける。カメラが後や上からの映像もとって、その映像が左右のスクリーンに映し出される。スグに鉄板中央辺りが盛り上がり、それが次第に大きくなっていく。途中、ベッドの辺り(つまり鉄板の下)のところでシートが破けて、カッパーフィールド氏の手が出る。手をすぐに引っ込めると、次の瞬間には鉄板よりも上の辺りでシートが破けて、そこからカッパーフィールド氏の手が出る。いかにも鉄板を貫通して上に上がってきたような印象である。

最後にシートを取り去ると、カッパーフィールド氏は鉄板の上に立っている。

4.「ビーチ」の準備

フリスビーを客席に投げる。「フリスビーを拾った、できれば女性の方、ステージまでお越し下さい。」1m×0.5mくらいのホワイトボードを持っている。ホワイトボードは中央に線が引いてあり、左右に分けられている。

「好きなスポーツは?」女性はおどおどした様子で、ハッキリ答えない。「休みの日なんかにどんなスポーツを?」女性は緊張している様子で、小声で「映画・・・」と答える。カッパーフィールド氏はやや当惑した顔で「・・・映画!なかなかいいスポーツです。・・・でも、他にありませんか?サッカーとか、水泳とか・・・自分がやらなくてもいいんですよ。」

女性はしばらく間をおいて「・・・テニス。」(女性が困った様子だったので、会場がざわめく一幕も。)

「それではここに、テニスをしているところのマンガを書いて下さい。」女性は思ったよりもすらすらとテニスラケットをもったヒトのマンガをホワイトノードの左半分に描いた。描いている最中に「今日のショーはちょっと長くかかりそうです」というジョークも。女性はマンガを描き終えると客席に戻る。拍手。

「では、イリーザを呼んでみましょう。」スクリーンが降りてくる。現地のビーチに立っているスタッフが映し出される。(スタッフに呼びかける)「ねえ、今のお客さんは『テニス』とおっしゃってるよ。」(スタッフはイヤホンの調子が悪くてうまく聞こえないという様子で)「何?・・・テニス??」などと言う。現地時間も表示されており、衛星回線で本当に現地にスタッフがいてやりとりをしているようである。通訳に、「テニスは日本語でなんと言うの?」と尋ね、通訳は困った顔で「・・・テニス・・・」と答える。「だから、日本語ではなんていうの?」などと言って笑わせた。(同様なギャグが何度か使われた。)

ここでカッパーフィールド氏は、下手側の階段から客席に下りて、3歳くらいの男の子に手伝いを頼み、子供と一緒にステージに戻ってくる。ホワイトボードは下手側にあるスタンドに置かれている。「今から、君にお願いがあるんだ。ここから(ステージへ上がる階段の中ほど)この『絵』を見張っていて欲しいんだ。ショーは見ないで、この絵だけを見ているんだ。いいね?」子供は観客に背をむけてホワイトボードを見上げてじっとしている。その可愛らしい姿に客席からは笑い声が。

感想:

最初の女性はずいぶんとまどっているようだった。その割にはマンガをてきぱきと描いたので、ちょっと違和感を感じた。子供も、会場が暗くなってもおどろかず、じっと絵を見つめているのは、なかなかほほえましいけれど、普通ならチョロチョロしてじっとしてなんかいないだろう。もちろん、会場が暗くなってしばらくするとスタッフが子供を誘導して、ステージ脇で保護していた。今後、子供が注目されるときだけ、先ほどの場所に誘導していた。

5.スニーカーのヒモに飛行する指輪

「指輪をお借りしたいのですが・・・」と言いながら上手側階段から客席に降りる。1人の女性をステージに上げる。「これは私が子供の頃にはいていたスニーカーです。」といって、手のひらの上に乗るほどの小さいスニーカーを1つ示す。これを右のお尻のポケットに突っ込んでおく。白いTシャツに青いシャツをはおっているので、ポケットに突っ込まれた「スニーカー」はシャツの下に隠れてしまう。スニーカーをポケットにしまう前に、女性にポケットを調べさせる。実際にポケットに手を突っ込ませるが、そのときにちょっと変な表情をする。

自分の手で何かを揉むような動作をして見せて、「ポケットの中でこんな手の動きをしましたね。」などといって女性をからかう。「もう一度調べてみてもらえませんか?」と言うが女性は拒否する。

カッパーフィールド氏は借りた指輪を自分の左手の小指にはめて観客に見せる。手元が左右のスクリーンに大写しになったのをみて、「なんかみたことある映像ですね・・・そうだ、『テレビショッピング』だ!」と言って、ハガキ大の「たったの29ドル99セント!」と書いた『値札』を指輪をはめた手のすぐ横に置いてみせる。観客が笑うと、札をひっくり返して見せる。「残りあと3つ!」

カッパーフィールド氏は女性の背後に回り、両手を肩越しに女性の前に回す。手の中で指輪を消して見せる。シャツをめくりそっとスニーカーを見ると、スニーカーの結んであるヒモに今消えた指輪が通っている。

感想:

とても可愛らしいマジックなのに、全体の演出は下品なものであった。リングフライトの変形版で、自分が今はいている靴の靴紐に指輪が飛行するという手品も既に発売されているので、目新しい感じはしなかった。ただ、ところどころで、カッパーフィールド氏の顔がスクリーンに大写しになった。子供っぽい、悪戯っぽい表情をする点が、チャーミングで、「下品」なムードが少し和らげられた。これは今回のショーで工夫されていた点で、「演技をする」という点に力が入っていたように思う。

6.シュリンキング・ボックス

ステージ背景の黒幕の中央の分かれ目から再びアヒルが出てくる。あきれたような顔をして抱きかかえて、下手の袖に持って行こうとする。思い直して下手側の観客にすうっと弧を描くようにアヒルを見せる。するとアヒルから水鉄砲のように水が出て、前の方の観客に水がかかる。(アヒルがおしっこをしたらしい。)

アヒルを下手の袖に始末して、ふとホワイトボードを注目すると子供がいない。子供の席を睨むと、子供は慌てて先ほどのポジションに走って戻ってくる。

「私の秘密工場をお見せしましょう。」

幕が開くと、工事現場のようなセット。男女スタッフが作業をしている。なぜか靴を脱いで中央の台の上に上がる。台の上の箱に工具を当てると火花が飛び散る。この箱にカッパーフィールド氏は入る。胴切りに用いるような、人が1人入れる程度の箱。頭と足が箱から飛び出している。すると箱が次第に縮んでいく。最終的には頭と足がほとんどくっつくくらいになる。また、箱が伸びて元通りになり、カッパーフィールド氏は箱から出る。

感想:

これもとくに珍しい印象はなかった。箱から出るとき、足が同時に引っ込み、引っ込むと同時に足が出ていたところにはサッと小さい布が引かれたところが、興味深かった。足の動きはなかなかリアルであった。

7.Moon: Interactive Experience

前回とほとんど同じ。靴をはいて、上手側から客席に降りて、女性の観客に手伝いを頼み再びステージに戻る。上手側にセットされた椅子に二人が並んで座る。上手側がカッパーフィールド氏。まずは、全ての観客も一緒に、自分や隣の女性と同じようにするように説明する。ショーが始まる前に用意しておいた8枚のカードを取り出すように指示する。

カードは月が印刷されたものが1枚。残りは真っ白なカード(7枚)である。これを指示に従いながら、裏表も含めてめちゃめちゃに混ぜてしまう。混ぜた結果は、5000人の観客の1人ひとりが違ったパターンであるように思われる。「さて、8枚のカードはそろえてお尻の下に敷いておいて下さい。左右どちらでもいいですが、真中はやめて下さい。敷くのは自分のお尻の下ですよ。」

カッパーフィールド氏は隣に座っている女性に離しかける。「お尻に敷いているカードを下さい。・・・私が取りましょうか?」女性は「結構です」と断る。「僕はただ、助けてあげようとしただけなんだけど。・・・カードが今ちらっと見えたかも知れませんから、さらに混ぜましょう。それからファンに広げてください・・・」

この状態で、カッパーフィールド氏は1枚のカードを引く。それが月のカードである。ここで、客席上手側にピンポンボールを投げる。拾った人(女性)に手伝ってもらう。その女性からカードを受け取る。「まだ暖かい・・・そうして少し湿っていますね。」8枚のカードを2つに分ける。どちらか1方を選んでもらう。さらに選ばれた4枚をファンにしてどれか1枚を選んでもらう。(裏表もバラバラに混ぜているので1枚はフェイス(白)が女性に向いている。)最初女性はフェイスアップの白いカードを選ぶ。カッパーフィールド氏は困った顔をして、「月のカードを当てるんですよ!」と言う。女性は次に別のカードを選ぶが、それは見事に月のカードである。

「これで2人終わった・・・あと、4998人か!・・・ではあとはまとめてやりましょう。1つだけ約束してください。もしも当たったら、そのカードを高く上げて立ち上がって下さい。」

「それでは、カードを手に持って。手元を見ると先に結果がわかることもありますから、カードを胸の高さにもってこっちを見て下さい。(覗き見て驚いた顔をする人の物真似などもして見せる。)一番上のカードをまずとって・・・感じて下さい・・・これは月のカードではありません。捨ててください。次のカードを取って。・・・いい感じですが、これも月のカードではありません。その次。・・・これは何か感じます。・・・そう、これが月のカードです。見てみてください。」

驚きの歓声が会場内に溢れ、観客は次々に月のカードを高く掲げ立ち上がる。

「『生徒の』皆さんが落ち着くまでしばらく待っていましょう。・・・今、月のカードが当たらなかった方、・・・誰のことだか、本人が一番よくわかっているはずです。・・・その方々は、カードを家に持って帰って、よく練習して下さい。」

感想:

前回とほとんど同じであった。リピーターのお客さんに対する配慮が感じられない。客席からボランティアを選び、ステージに上がるまでに、カードは簡単にすりかえられるが、実際にその場にいると奇跡のように感じられる。

8.2人の女性の消失と出現

「私には不思議な思い出があります。ある日自宅のそばを散歩をして、1軒の家の前を通りかかりました。窓から家の中が見えて、そこには2人の人がいるのがわかりました。すると想像のなかで自分はその家に入ってしまったのです。」

バックのカーテンが開く。

手前にはベッド。ベッドの周りには枠がついており、カーテンが垂らせるようになっている。上手後方には窓枠が吊り下げられており、その後から客席側をのぞき込むようなカッパーフィールド氏。ベッドには2人の女性が眠っている。女性は目を覚まし、ベッドの上で踊り、また、ベッドから降りて上手側で踊る。窓枠はいつのまにか上の方へ移動しており、カッパーフィールド氏は『部屋の中』に入ってきている。2人の女性はカッパーフィールド氏にまとわりつくようにセクシーにダンスをする。

3人は次第にバックへ移動。バックにはベンチが4台ほど並べられている。その前あたりで、カッパーフィールド氏は2人の女性にシーツをかぶせると一瞬にして女性たちは溶けるように消えてしまう。ベンチの少し上にたくさんのライトが用意されており、すぐにそのライトが客席に向かって点灯する。カッパーフィールド氏はベンチの後を通ってみせ、どこにも異状がないことを示す。

ベッドのシーツが盛りあがり、再び2人の女性が現れる。窓枠がもとの位置まで下がり、カッパーフィールド氏はまた窓からこちらを覗いている。

感想:

今回最もよかったイリュージョン。美しく、感傷的で、そして不思議であった。最後も2人の人間が消えるけれど、あんな大仕掛けの道具を使わなくたって、こんな風に布1枚で消せてしまえるのだ。

9.トルネード(ビデオ)

5:30 ここで約1時間経過。「この間ニューヨークですごいイリュージョンをやって、全米で放送されました。その映像を見たいですか?・・・いやどっちみち今から放映しますが。」

プロパンガスのバーナーを4方向から中央に向かって放射する。その中央に防火服を着て、顔には火傷止めクリーム(ファイヤージェル)を塗った、カッパーフィールド氏が立つ。上には大型ファンが取り付けられており、放射された炎は風の影響で上部に竜巻状に燃え上がり、中央に立つカッパーフィールド氏の姿を完全に隠してしまう。2度も竜巻状の炎を数秒間作り出しても、その中に立っているカッパーフィールド氏は無事だというもの。

上部のファンで体が揺れないように左右の腕にヒモを結び付け、固定をした上でのチャレンジ。人生において最も緊迫した5分間だったという。中央部付近の温度は一瞬にして2000度くらいになるそうで、人形を使った実験では防火服も燃えて真っ黒になったいた。竜巻を起こす風の起こし方も周到に計算されたものであることを、炎の代わりに煙を使った実験で示していた。

炎を止めた直後、カッパーフィールド氏は無事であることを示したが、駆け寄るスタッフが左足についた火を消火器で消すという一幕も。

感想:

マジック、イリュージョンを超えているという印象があった。

10.360度回転する上半身

「ショーをしながら世界中を回るためには、精神的・肉体的にコンディションを整えておく必要があり、気を使います。」といって、両手で頭をもって「整体」のように、コキッと動かす。すると、ボキボキボキ!と大きな音がする。逆のほうに頭を動かすと、また大きな音がする。上手から登場して、ステージの中央で、手に隠していた「コキコキ」音を出す道具をみせて、音をもう一度出して見せる。

背後に足のついたドラム缶のような道具が運び出される。「これは背骨のトレーニングマシーンです。・・・そうそう、トレーニングのときは靴を脱がなくちゃ・・・」

ドラム缶の中に本人が立つ。下からは足が見えている。上からは肩から上くらいが見えている。両手でドラム缶を持って回すと、上半身がドラム缶と一緒に回転して後を向いてしまう。下半身はそのまま前を向いている。2回転ほどする。ドラム缶は真中から左右に割れるようになっていて、両脇のアシスタントがドラム缶を取り去ると、カッパーフィールド氏は何事もなかったようにそこに立っている。

感想:

現象がわかりにくかったのではないか。その場でくるくる回っているだけならなんの不思議もない。足が、そのままこっちを向いている、というところがミソなのに、それはスクリーンを通してでないとなかなか確認できない。途中、カッパーフィールド氏は少しよろけるようなことになり、そのとき、(当然といえば当然だが)足がトトト、と動いたところがリアリティーがあった。

11.腕の切断

「子供の頃、ものを作るのが好きでした。宿題をやる機械を発明したときは、5人分の宿題をいっぺんにやってくれました。そのために停学になっちゃいましたがね。」

向こうまで透けて見える台の上に20pくらいの高さの箱が上手側に置いてあり、その上にさらに20p位の箱が置いてある。上手側に立って、上の箱に腕を通す。箱の端から手が出ている。(2つの箱は腕が通るくらいの大きさ・長さ)腕を3つに切る。すなわち2枚の板を箱の上から入れてしまう。さらに3分割された箱の真中を取り去ってしまう。完全に腕は切れており、真中は何もない。さらに、下の箱の前面の蓋を完全に開けると、向こうまで筒抜けである。後をアシスタントが横切ると、アシスタントが下の箱を通して見える。切れている手に指揮者が使うタクトを持たせると、切れている手はBGMに合わせてタクトを振る。

切断するための板を抜き、取り去った真中部分をもとに戻す。タクトをもったなり手を引きぬき、無事であることを示す。

感想:

最初の板を箱に通すと、今まで動いていた手が突然ぐったりする、などユーモラスな演技が織り込まれていた。

12.テスト・コンディション

フリスビーを会場に投げ、受け取った男性にステージに上がってもらう。ステージに上がったら白衣を着てもらう。テレビドラマのERに出てくるなんとかにそっくりだ、世代は一回り上だけどね、などとからかってみせる。「マジシャンはお客さんの注意をそらそうとします。『こっち!』などと叫んでいるすきに、あなたの財布を密かに抜き取ってしまうかもしれません。注意してくださいね。これからドクター・スランピーと共に箱を調べてもらいます。」ドクター・スランピーが登場する。男性をドクター・スランピーに紹介すると、自分は上手側の階段から降りて客席を通って姿を消してしまう。男性は、ドクター・スランピーの指示に従い、箱や床を調べる。

男性はまずバットで床をたたくように指示される。「床には穴がありませんね?・・・叩きすぎてあなたが床に穴をあけないように・・・」手伝ってくれる女性アシスタント2人もここで紹介する。箱は1m四方の白い立方体。箱もよく調べてもらう。箱をぐるりと回転させる。「他に調べたいところはありませんか?」

男性はステージ上、上手側の椅子に座って見ていてもらう。4人のアシスタントが出てくる。箱の側面は実は2つ折りになっており、これを上方に折り上げると、箱は倍の長さの直方体になる。(電話ボックスのようになる。)ステージ上のライトが点灯して客席に強い光を投げかける。間もなく箱の前面の壁を破ってカッパーフィールド氏が登場する。

男性を客席に案内するときに、忘れ物ですよ、といって男性の財布を渡す。

感想:

前回と演出は変っていた。きわめて不思議性が強く、すぐれたイリュージョンであると思う。

13.アヒルの移動

バックの黒幕中央からまたまたアヒルが出てくる。カッパーフィールド氏はやりきれない表情でアヒルを抱きかかえる。また、下手の観客に見せようとするので、観客は水を掛けられると思い、キャーキャー言う。(水は出なかった。)アヒルを抱いたまま、上手側から客席へ降り、観客の男性、1名を連れてステージに戻る。一抱えもある、木製の蓋つきのバケツを示し、蓋を開け中に手を入れてあらためてもらう。蓋を閉めて男性にそのバケツを抱きかかえていてもらう。

ステージ中央の台の上に30p四方の箱がある。ここにアヒルを入れる。おまじないをかけて箱の蓋を取り、側面もバラバラにしていくがアヒルは消えてしまう。男性の抱えているバケツの蓋を開けるとアヒルが出てくる。

「何か質問は?」と、カッパーフィールド氏。

会場の外国人スタッフ(?)の声がする。「モウ一度ヤッテ!」

さらには「スローモションデ!」という声も。

英語なまりの日本語に、カッパーフィールド氏も笑いながら、声の主をからかう。「完璧な日本語だ!」など。「スローモーションでやったらばれるじゃないか!」というカッパーフィールド氏に、「デキルヨ!」の声。それで、もう一度、今度はスローモーションで同じトリックをやることになる。

上手に引っ込んだカッパーフィールド氏は再びアヒルを抱きかかえてくる。が、アヒルの様子がどうもおかしい。人形のようである。笑う観客に「どうしたの?さっきのアヒルだよ・・・ちょっと疲れているけど・・・」アヒルの首を動かしておかしな演技をする。「休め!」(といって、アヒルを床に放りだす。)「はい、ゴローン!」(といって、アヒルを蹴っ飛ばす。)

先ほど手伝ってくれた男性を再び呼び出し、先ほどと同じように、木のバケツをあらためてもらい、これを抱きかかえてステージ上手側に立っていてもらう。「それではここからスローモーションです。」

カッパーフィールド氏がスローモーションで箱にアヒルを入れると、上手側から「黒子」がスローモーションで駆け寄ってくる。黒子は箱からアヒルを取り出し、アヒルを抱えて上手側にスローモーションで走る。(このとき、アヒルから水が出て、今度は上手のお客さんに水がかかる。)さらにアヒルを男性のもっているバケツの中に入れようとする。

カッパーフィールド氏は、先ほどと同じように箱をバラバラにして、アヒルが消えたことを示す。上手に目をやると、アヒルがバケツにうまく入らないので、カッパーフィールド氏もあせってバケツにかけより、「こうやって入れろ!」というような指示を与えたりする。

バケツの蓋を閉めて、バケツを受け取る。男性にお礼を言うと、男性もスローモーションで階段をおりて客席に戻っていくので、会場も大いに沸く。バケツの蓋を開けると生きたアヒルが出てくる。カッパーフィールド氏はこれを抱きかかえ、下手側に引っ込む。(このとき再び下手側の観客めがけて水を出す。)

感想:

楽しい演出であった。2度目に消すときに、ネタ場の蓋が何でもないことを何気なく示す(チラッと蓋のウラを見せる)点が、憎いところであった。動物の扱いは乱暴にしない方がいいと思われる。

14.ビーチ

「一瞬にして地球の反対側まで行けるとしたら、どこに行きたいか?というアンケートを世界規模で行いました。それでたくさんの手紙を受け取りました。その中には感動的なものも多くありました。今日はそのうちの1つをご紹介します。タイのソム・サックシー・プラサートさんからの手紙です。」

スクリーンが下りてきて、タイのソム・サックシー・プラサートさん一家の写真を次々に映し出す。

「子供のソムタイは母親を愛していました。喧嘩をするようなこともありましたが、いい子でした。しかし、成長するに従い私たちとの折り合いが悪くなるようになり、17歳のとき、ついに家を飛び出してしまったのです。」

「ソムタイが幼かったころ、私は彼のヒーローでした。いつか母親の好きなスペインのイリーザ島に一家で行くことが夢でした。しかし、日々の生活は苦しく、結局その夢はかなえられていません。この手紙はソムタイがのために書いています。あの夢がかなうなら・・・ソム・サックシー・プラサート」

「今日は、この会場にソムタイくんを呼んであります。」ソムタイくんを呼ぶと、最前列に座っていたタイ人の少年がステージに上がる。カッパーフィールド氏は彼に父親からの手紙を渡す。

ステージ中央に降ろされたスクリーンにはスペインのイリーザ島のビーチの様子が映し出されている。現地スタッフに、砂浜に60p四方の白い布を敷いてもらう。「今からソムタイくんとそっちへ行くんだけれど、途中に雨雲があるということだから、大丈夫かな?」などと言ってみせる。

「カメラトリックは使いません。これを批判する人もいますが、本当に私たちは地球の裏側まで行くんです。これはイリュージョンです。」

ここで、カッパーフィールド氏と少年は靴を脱ぐ。

「今から、鉄の玉を客席に投げます。頭にぶつかって血が流れても、ステージに上がってきて下さい・・・冗談です。これはとても軽い玉です。受け取った人はもう一度ボールを放って下さい。2度目にボールを受け取った方が、ステージに上がって下さい。」

下手側客席にボールを投げる。(このとき、ホワイトボードの前には最初の子供が立っている。)ボールを受け取った男性以外にも女の子を含む3人の観客を選び、ステージに上がってもらう。ホワイトボードの右半分に、女の子には名前を書いてもらう。4名の人に並んでもらい、中央の人にはホワイトボードをもってもらう。この状態で、カッパーフィールド氏はポラロイド写真で写真を撮る。出来た写真には、日付を入れてもらったり、サインをしてもらったりする。

今度は、タイ人の少年にステージ中央に後ろ向きに立ってもらい(客席に背を向ける)、同じボールを客席に投げさせる。さらに、受け取った人はボールを投げてもらう。これをさらにもう一度繰り返し、3度目にボールを受け取った人にステージに上がってもらった。(英語が話せる人でないといけないという条件のために、3度目にボールを受け取った人が選ばれた。)女性が選ばれ、カッパーフィールド氏はその女性をステージに招いた。

カッパーフィールド氏は女性に好きなアルファベットを2つ言うように頼む。「BとA」と答えられた。上手側で、2人は並んで立ち(女性が上手側)、カッパーフィールド氏は女性に右腕をまくって差し出した。腕の内側に、B、Aと書いて下さいと、女性に頼みマジックペンを渡した。客席側からは、女性が書いているところは見えない。数分かかって、アルファベットが腕に書かれたようである。これをカッパーフィールド氏は観客全員に見せる。

ここでバックのカーテンが開く。上手側に巨大なシャモジのようなものが設置されており、その上に椅子が2脚置いてある。『シャモジ』は客席の方へ突き出てくる。(ステージよりは前にせり出るが、客席よりは手前。)カッパーフィールド氏は店舗などにぶら下がっている万引き防止用の凸面鏡を示す。「これをここに置いておきます。・・・セブンイレブンから持ってきちゃいました。」(ここは詳細不明だが、裏側が見えている状態で行うというようなものであったように思う。)

2人が椅子に座り、回りを囲むようにカーテンが降ろされる。中では、ライトをもって振るカッパーフィールド氏の存在が感じられる。が、次の瞬間カーテンが降ろされると、2人は忽然と消えている。『シャモジ』はステージに引っ込む。

スクリーンには砂浜に敷いた布の上に、今、椅子の回りに降ろしたのと同じような白いカーテンが2人のスタッフによって持ち上げられる。すぐにカーテンを下ろすと、カッパーフィールド氏とタイ人の少年がそこにいる。写真ももっている様子だ。少年は喜び、砂を握って、それを投げ、海の方へ走っていく。

カッパーフィールド氏が砂の上で手に持った写真を、アップで撮ると、間違えなく会場でさきほど撮った写真である。少年の父親も現れ、少年と抱き合う姿を見ながら、カッパーフィールド氏は再び先ほどのカーテンのところに立つ。2人のアシスタントがカーテンを持ち上げ、一瞬カッパーフィールド氏の姿を隠して、カーテンを下ろすとそこにはカッパーフィールド氏はもういない。

会場の後の入口から、カッパーフィールド氏が入ってくる。ステージに上がると、先ほどのビーチの砂を握りこぶしからサラサラと落して見せる。

感想:

どうせならホワイトボードごと移動すればいいのに、と思わずにはいられなかった。タイ人を使うところも、かなり不自然。道具立ても大袈裟。現地でカッパーフィールド氏が現れたり消えたりする方が不思議だった。

15.バイクとカッパーフィールド氏の消失と出現

スタンディング・オベーションに答えて、カッパーフィールド氏は「もう1つお見せします」と言い、会場は大いに沸く。

ブルーのシャツを脱ぎ、アシスタントが持って来た皮ジャンを切る。フルフェイスのヘルメットをかぶる。一瞬後の黒幕の中に中央の分かれ目から入る(手は出ている)が、すぐにその黒幕が開けられる。冒頭のシーンで出てきたバイクがある。その後に金属性の檻。

カッパーフィールド氏は一瞬、ヘルメットの前のプラスチックを上に上げて顔を見せ、すぐにまた下ろした。バイクにまたがり、檻の中に入る。そのまま檻は持ち上げられる。あっという間に、檻が開き1枚の平面になてしまい、バイクとカッパーフィールド氏は消えてしまっている。

会場の一番後にバイクにまたがったカッパーフィールド氏が現れる。

カッパーフィールド氏はステージに戻り、4人のアシスタントと手をつなぎお辞儀をする。

感想:

インド大魔術団を彷彿とさせるような「大ネタ」。カッパーフィールド氏らしさがほとんどなかった。

まとめ:

前回、演目は16あり、そのうちイリュージョンが8。今回は、演目が14あり、そのうちイリュージョンが8。疲れないで楽しむことが出来たが、ちょっと物足りないような気もした。ダブっていた演目は3つ。(手を組むマジック、月のカード、テストコンディション)

現象別には、以下の通り。

(1)出現:前回2、今回2
(2)消失:前回1、今回1
(3)移動:前回2、今回5(消失と出現の組み合わせ)
(4)貫通:前回1、今回1
(5)浮揚:前回3、今回0
(6)切断・復活:前回1、今回1
(7)変化:前回1、今回2
(8)メンタル:前回3、今回1
(9)指のマジック:前回1、今回1
(10)ビデオ:前回1、今回1

浮揚やメンタルが少なくなった。また現れたり、消えたりという現象が、前回5回だったものが、今回は8回となり、これが「インド大魔術団」風になった原因で、逆に言えば「疲れないショー」であったと言える。

12.テストコンディションで客席に消えたカッパーフィールド氏が現れ、14.ビーチで消えたカッパーフィールド氏が客席から現れ、15.でもう一度バイクごと会場の後に現れた。同じような現象が3つ続く上に、その間にはアヒルまで移動している。マジックの配列のまずさは指摘せざるを得ない。

3.鉄板の貫通、10.360度回転する上半身は、道具立ての割には説得力が弱い。また、5.指輪の移動や、11.腕の切断は、どう考えても5000人を相手にする演目ではない。12,000円をとって見せるための構成とはお世辞にも言い難い気がした。

レポートにも書いたが、カッパーフィールド氏の表情をカメラが追って、それを左右のスクリーンに大写しにすることで、よい「演技」を見ることが出来、全体としてチャーミングな人柄としてカッパーフィールド氏を受けとめることが出来た。

ステージ中央のスクリーンも効果的に使われ、スピーディーに降りたの上がったりしていたが、全体的に、印象の薄いショーであったことは否めない。

2001年7月21日 田 代  茂


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Update: 2001/8/20