Mr.マリックのショー「超魔術 Mr.マリック」

日時:1989年9月2日(土)17:30開場 18:30開演
会場: 横浜文化体育館
入場料:前売3500円(全自由席)
主催:四島の灯守るKANAHGAWAフォーラム
企画制作:株式会社プロスバー

Update: 1998/1/15


はじめに

maric90a.jpg (17408 バイト)事前にほとんど宣伝がなかったので、あまり人が集まらないのではないかと思ってゆっくり会場にでかけましたが、会場の前には長蛇の列ができており、あらためてMr.マリックの人気の凄さを見せつけられました。聞くところでは徹夜で並んでいた人もいたそうです。入場者数はおよそ3000人位だったと思います。(主催者側では、5000人と言っていましたが...)

 さて、ステ−ジの構成ですが、舞台の少し前に円形の特設フロアが設けられ両側にはジャンボ・スクリ−ンを配置し、遠くの観客にもMr.マリックの手元が見えるようにしています。しかし残念ながら一般のTV画像のような鮮明さはなく、画面の明るさが極端に落ちてしまって良く見えません。これは現在の大型ディスプレイ技術の限界でもあり、技術の進歩が待たれるところです。

 いよいよ、ショーのオ−プニングです。以下、順を追ってその模様をお伝えします。

*ビデオ映像による「卵の復活」

割った生卵をおなじみ「ハンドパワ−」により元の卵の状態に復活させます。これは、画像の見づらさもあり、時間をかけたわりには、あまり効果がなかったようです。

*Mr.マリックの登場

突如、会場に轟音が鳴り響き、次々にスポットライトがステ−ジ中央の一点を照らした後、舞台全面にひろがったドライアイスの煙のなかからMr.マリックが登場します。彼が「私が、ハンドパワ−のMr.マリックです。」と叫ぶと会場には大歓声が沸き起こります。心憎いような劇的な演出です。

*「キ−・ベンディング」

お客さんから借りたキ−をハンドパワ−により、曲げてしまいます。

*デジタル時計による「透視術」

 アシスタントの女性が後ろ向きになり、手に持った6本のバラの花を客席に投げそれを拾った女性のお客さんにステ−ジに上がってもらいます。

 Mr.マリックが客席に降り目をつぶっている間に、6人の女性の一人が先程、曲げられたキ−を手に握り、残りの女性も同様に手を握ります。

 Mr.マリックは、別の観客からデジタル時計を借り、一人づつ女性の手に近づけると、なんとキ−を握っている女性の時だけアラ−ムが鳴りだすのです。

*コインのコップへの移動とコップの底からの貫通

 再び、バラの花により一人の女性を選びステ−ジの椅子に座ってもらいます。Mr.マリックは、透明のガマ口より500円玉を4枚取り出し、4枚あることをよく示した後、女性の手にしっかり握ってもらいます。

 次に、Mr.マリックは透明のコップを手に持ち、ハンドパワ−をかけると、一枚の500円玉が突然コップの中に飛び込みます。そして女性の手を開けるとコインが3枚に減っています。

さらに、Mr.マリックは、コップのコインに注目させ、コップの底からコインが貫通していくのを見せていきます。コップの底から半分ほどコインが通り抜けているのが見え、最後に完全に下に落ちていくのが分かります。ここで、客席からは「信じられない!」という声が湧きあがりました。

*「紙幣の復活」

お客さんから一万円札を借り、別のお客さんに本当に半分に破ってもらいます。片方を手に握ってもらい、残りをライタ−で燃やします。お客さんが手を開けてみると破ったはずの一万円札は、もとに戻っています。

*ESPカ−ドによる「透視術」

おなじみ5種類の図形(波、星、十字架、四角、丸)が書かれたESPカ−ドをアシスタントの女性が任意に一枚選び裏向きにして胸の前に持ちます。

 ここで、Mr.マリックは観客全員に向かって「このカ−ドが何であるか当てて下さい。」と問いかけます。

 「皆さんの中に素晴らしい能力を持った方が、いらっしゃいます。その人をこれから、捜し出しましょう。」

  1枚目・・・かなりの観客が当たります。

  2枚目・・・100人弱の人が連続して当てました。

  3枚目・・・11人の人が残りました。この人達がステ−ジの前に呼ばれます。

  4枚目・・・4人の人が当たりました。

  5枚目・・・1人の人だけが当たりました。

  6枚目・・・さらに続けて当たります。

  7枚目・・・とうとう、はずれてしまいました。

        「しかし、あなたは素晴らしい能力を持った方です!」

       (ちなみに、ギネスブックでは、7枚連続が最高記録だそうです。)

これは、観衆の数の多さを利用した巧みな演出といえます。もし何百万というTV視聴者を対象にやったとしたら、一体何枚まで当てる人が現われるでしょうか?

*「念写カ−ド」

お客さんの手の上にMr.マリックがカ−ドを一枚づつ置いていき、好きな所でストップをかけてもらうように頼みます。そのカ−ドをお客さんに覚えてもらい心の中で強くそのカ−ドを念じてもらいます。

Mr.マリックは、インスタントカメラを持ち出しお客さんの顔を写します。すぐ、フィルムを取り出し感光面をモニタ−カメラに示していると、しだいに画像が見え始め、お客さんの額の所に一枚のカ−ドが写しだされます。

そして、そのカ−ドがみごとお客さんの覚えたカ−ドと一致しているというわけです。

*「スプ−ン曲げ」

 最後は、クライマックスのスプ−ン曲げです。まず、客席から一人の女の子を選び、ステ−ジに上がってもらいます。

 Mr.マリックは、彼女にハンドパワ−を与え、彼女自身にスプ−ンを曲げさせます。方法は、左手で柄の部分を持たせ、右手の人差し指でスプ−ンの先を手前に引くと、簡単に曲がってしまうというものです。               

 つぎに、Mr.マリックは別のスプ−ンを取り出し、曲げた後、再び元に戻し、さらには、完全に折ってしまいます。

「皆さんも、この少女のように純粋で素直な時期があったはずです。スプ−ンは固くて曲がらないという先入観念は捨てて下さい!さあ、一緒にやりましょう」

ここで、観客は入場時に受け取ったスプ−ンを全員取り出し、Mr.マリックの指示通り、右手の人差し指でスプ−ンの先を手前に引くと...

 10人に一人位の割りでスプ−ンは、本当に曲がりました。
   (残念ながら、私のスプ−ンは曲がりませんでした。)

観客の興奮覚め止まぬ中、

「皆さん!それでは、10月19日にTVでまたお会いしましょう」

という言葉を後にMr.マリックは去っていきました。(演技時間 約1時間30分)

ショーを終えて

こうしてMr.マリックのショーは終りましたが、帰り道、一緒に誘った友人に感想を聞いてみました。彼は、超常現象に興味を持っており、今日の現象は全て信じると言っています。マジックマニアの私の目からは、やはりマジックショーとしか見えませんでしたが、あえて種明しはしませんでした。

Mr.マリックこと松尾昭氏は、実は私の好きなマジシャンの一人ですが、氏の演技を初めてみたのは、私が学生時代の頃です。当時、クラブの先輩が日本橋高島屋で日本奇術連盟のディ−ラ−をやられており、冬休みのアルバイトで、少しお手伝いしたことがありました。ある日の夜、若手の凄いマジシャンが出演するというので、先輩に連れられて、とあるナイトクラブでショーを見ました。メキシカンロ−プ、人間の身体以上の大きさのリングを使ったリンキングリング、白紙が本物の紙幣に変わってしまったり、燃やしたはずの紙幣が復活するといったマジックなどが演目だったと思います。スピ−ディ−で切れのよい演技と、観客を引きつける話術にプロのマジシャンの凄さを感じたのを覚えています。

その後、氏は日本奇術連盟から、テンヨ−のディ−ラ−に移籍し、さらに独立して、日本最初のオ−プンショップ「マリック・プロモ−ション」を創設し、多くのマジックマニアに支持されました。

1978年に日本テレビ開局25年記念「世界奇術大賞」が行なわれましたが、ここでも優れたクロ−スアップマジックを披露しています。   

また、毎年恒例の石田天海賞パ−ティ−では、ユ−モア溢れるディ−ラ−ショーでマジックファンを楽しませてくれています。

そして、昨年の日本テレビ「11PM」から、今年の「木曜スペシャル」でのTV放映により、爆発的な「超魔術Mr.マリック」ブ−ムを日本中に巻き起こしている事は、皆さんご御存知の通りです。

 このマジックフォ−ラムでも、多くの方が指摘されているように、Mr.マリック氏は、マジックの新たなエンタ−テイメントのジャンルを開拓しているのだと、私も思っています。ただ、この分野は、一歩間違えると、とても危険な世界です。

今、アメリカでは心や精神性に価値を見出し現実世界に対して自分の人生への実現への可能性を求める様々な手法が開発され、多くの人がそのセミナ−を受けているという話を聞いた事があります。遠からず日本にもその波が押し寄せて来るでしょう。

かつて、初代引田天功師は、晩年のショーの中で催眠術を売り物にしていたのを思い起こします。TVで何度も放映されたので、ご記憶の方も多いと思います。人間の弱い部分につけ込み、品性を疑うような演出にエスカレ−トしていったのは残念でなりません。

しかし、今回のショーを見るかぎりでは、Mr.マリック氏は、健全な方向に向かっているようなので、安心しました。自分は特別な人間ではなく、トレ−ニングによって今のサイキックパワ−を身につけた事を強調しています。そして、どんな人にもそのパワ−が隠されていると、勇気づけようとしています。

一マジックマニアとして、今後のMr.マリックの活躍を期待しています。

少し、長くなってしまいましたが、今回のショーを見て感じた事を書いてみました。

                   1989.9.3 スティング(MHB01374)


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Update: 1998/1/15