第35回テンヨ−手品フェスティバル
日時:1993年7月18日(日)13:30〜16:30
会場: 三越劇場(日本橋三越本店6階)
主催:株式会社 テンヨー
Update: 1998/1/15
今回のショ−の目玉は、何と言っても島田晴夫師の出演です。
35年前、師が17歳の時、プロデビュ−したのが、ここ三越劇場のステ−ジで、この時演じた八つ玉(ビリヤ−ド・ボ−ル)は、伝説になっているほどです。
*ごあいさつ 山田 昭 (テンヨ− 社長)
山田社長から当時のプログラム(1958年第3回テンヨ−手品大会)の紹介を交えながら、貴重なエピソ−ドが披露されました。
当日売り場で配布された当時のプログラムを見ると、
スライハンドの妙技
プロマチ”ッシャンの卵
嶋 田 晴 夫
と紹介されています。
さらに、トリを飾っていたのは、
新作プロダクション他
新進プロマチ”ッシャン
引 田 天 功
というわけです。
ちなみに、初代引田天功師への女性の人気は、大変なものだったそうです。
この後、島田晴夫さんとディアナ夫人が、盛大な拍手のなか登場。さらに、応援に駆けつけた立川談志師匠が場を盛り上げます。
そして、ダ−ク広和・見延周美さんの司会で、いよいよショ−の開幕です。
*第1部
現役の学生マジシャンの出演です。
山本 暁 (専修大学マジックサ−クル) ・・・ インコ、卵、シルク
トップのプレッシャ−を感じさせないで無難にまとめていましたが、インパクトに欠ける演技でした。最初のシルクからのインコの出現は、アピ−ルが弱い印象。
石井希代子 (慶応義塾大学奇術愛好会) ・・・ ビリヤ−ド・ボ−ル
しっとりとしたム−ドある演技。しかし、学生らしい溌剌さに欠けるという声も。
黒の燕尾服のコスチュ−ムは、アンバランスな印象。
清水 博之 (東京大学奇術愛好会) ・・・ シンブル、ウオンド
シンブルのところは、現象がさっぱり分からない。3本のカラフルなウオンドの出現はあざやか。
宮尾 信子 (日本大学芸術学部) ・・・ カンカン帽
典型的な学生のステ−ジ動作とアピ−ル。
出し物がシルクとくす玉では平凡すぎる。もっと工夫が欲しい。
中川 修 (東京大学奇術愛好会) ・・・ ジャグリング
ボ−ルのジャグリングのみという日本のマジックショ−では、珍しい演目。
投げあげるボ−ルの軌道はもっと高い方がよい。
小島 友行 (東京大学奇術愛好会) ・・・ 傘(和妻)
最後の傘の大きさにビックリ。国旗の日の丸の扱いが粗末。もっと丁寧に扱って欲しい。
大塚 太郎 (慶応義塾大学奇術愛好会) ・・・ ミリオンカ−ド、ハト
カ−ドファンプロダクションがきれい。演技力あり。
ただし、フィニッシュの噴水カ−ドが短かったのは惜しい。
インコの出現は効果が薄く、手順として疑問。
*新製品紹介
テンヨ−の麻生良明氏によるディ−ラ−ショ−。
今年の新製品は、ミステリ−サ−クル(鉛筆)、フラッシュフレ−ム(カ−ド)
パンドラボックス(スポンジボ−ル)、クレジットスリラ−(カ−ド)の4点。
若手クリエ−タの鈴木徹さんと岸本道明さんが頑張っています。
反面、加藤英夫さんと近藤博さんの作品がなかったのは、やや残念。
その他、ジャンボタンバリン、のべシルク、寿ハンカチ等を紹介。
*第2部
シ・オ・ミ (塩見昌巳:京都高島屋テンヨ−ディ−ラ−)
冒頭からギャグの連発。関西系のノリで客席を大いに沸かせました。
後半は一転して、シリアスなム−ドのシルバ−ボ−ルで、芸域の広さを感じさせました。
内藤 靖彰 ・・・ ファイア、シルク、水
IBMコンベンションに4年連続入賞しただけあって、オリジナリティ豊かな演技でした。
終盤、瓶の中から明りが放射するところがありましたが、意図が不明です。
伊藤 夢葉 ・・・ 新聞紙、ロ−プ
お得意のおしゃべりをまじえない演技でしたが、独特のユ−モラスな味を出していました。
ロ−プがズボンの中に絡まってしまったところの足さばきは絶妙。
ただし、オチのパンツのデザインがいまひとつでした。
松旭斎すみえ ・・・ ミリオンカ−ド、カ−ド当て、リンキングリング
得意芸のミリオンカ−ドでは、いつもながらの安定したテクニックを見せてくれました。
続いてのお客さんを交えてのカ−ド当てでは、女性らしいやさしさが、そして、最後のリングでは、華麗さが光っていました。
真ん中のリングを2本のリングの間できれいに回転させるイフェクトは新趣向。
何か新しい工夫があるようでした。
2番目のカ−ド当てでは、セリフにミスがみられました。
お客さんに対して、「1から100までの間のお好きな数を言って下さい。」と頼んだにもかかわらず、後で「二桁の数のはずですね。」と確認したところは、ちょっと変でした。結局当たらなかったのですが、失敗なのかジョ−クなのかが意味不明でした。
*第3部
ダ−ク・広和 ・・・ ハンガ−、サムタイ
最初は、舞台に上がってもらったお客さんの腕に切れ目のないハンガ−が通り抜けてしまうというコメディ−マジック。
私は初めて見た演目でしたが、おしゃべりの軽妙さとお客さんとの掛け合いの事さは、さすがプロと思わせるものがありました。
しかし、次のサムタイの方はまだ演技がこなれていない印象を受けました。サムタイの結ばせ方や、最後にサムタイをほどいてもらわずに終ってしまった点など、北見マキさんや藤山新太郎さんの演技と比較すると見劣りするようです。
島田晴夫&ディアナ
さて、いよいよ島田晴夫さんの登場を迎えます。今日の主役だけに、客席は一瞬し−んと静まり返りました。いやがおうでも期待感は高まります。
そこへ、火のついたト−チを持った島田さんがステ−ジ上手から登場。スポットライトが当たると客席からは大歓声が沸き起こりました。
白い手袋を脱ぐとそこには真っ白なハトが出現。さらに何羽もの美しいハトとカ−ドの出現。最後は、2羽のハトを空中に投げあげると2枚の白いシルクへの変化で終りました。
このハトのプロダクションは、以前NHKのテレビ放映で見たことがありましたが、生で見るのは初めてのことでした。
そして、この感動は、ちょっと文章では表現できないほどです。そこには、長年ショ−ビジネスの本場アメリカでトップマジシャンとして活躍し続けてきたショ−マンの強烈なプロ魂がありました。
ステ−ジの広さを意識した身体の動き、高度なテクニックを感じさせない演技。
そして何とも言えない迫力、まさにプロの芸の真髄を見る思いでした。
また、アシスタントのディアナ夫人の後見ぶりの素晴らしさも見逃せません。
一歩下がって演者を見守り、また無駄のない動きで演者をサポ−トし、最大限に演者を引き立てる姿は、後見の模範とも言えるでしょう。
出演前の紹介の中で、島田さんは次のような裏話をしてくれました。
「私は、ステ−ジに立つ前日に必ず会場の下見をすることにしています。今回も、昨日このステ−ジの下見に来ました。私がプロデビュ−をしたこの三越劇場は、私にとって忘れられないステ−ジなのです...」
1993.8.8 スティング(MHB01374)
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Update: 1998/1/15