第36回テンヨ−手品フェスティバル
日時:1994年9月15日(祝) 13:30〜16:45
会場: 三越劇場(日本橋三越本店6階)
主催:株式会社 テンヨー
Update: 1998/1/1
今年のテンヨ−大会は、FISM94が7月に横浜で開催されたため、時期をずらせて9月に開かれました。なお、来年の第37回大会は、95年7月16日に決まったそうです。
FMAGICからも多数の人が、参加しました。
(出演者)気まぐれP&Aさん、NAN(妹)さん
(観客)だるまさん、◆チェシャ猫◆さん、HIROさん、NYAOさん、クジラさん、道さん、UEさん、あかねさん、スティング
さて、ショ−の感想ですが、今年はとても見どころの多い大会だったと思います。
それでは、順を追ってご紹介しましょう。
まず、近藤さんから、最近のトピックスのご紹介がありました。
・テンヨ−が「タ−ベルコ−ス第8巻」(リチャ−ド・カウフマン著)の日本語版権を取得した。発刊は来年末以降の予定。なお、カウフマン氏は第9巻、第10巻の準備を進めているとのこと。
・ミルトン・ブラットレ−氏がテンヨ−商品の全米販売展開を進め、MagicWorksというニュ−ズレタ−を発刊した。今後、日欧でも発売する予定。
・テンヨ−は、長年「手品」という呼称を使ってきたが、新しい時代に向けて「マジックテイメント」という呼称に変えていく意向である。
この後、ダ−ク広和さんの司会により、マジックショ−の開幕です。
(以下、敬称略)
*木村 達人(東京大学奇術愛好会)
和妻(傘のプロダクション)
トップバッタ−のプレッシャ−があったと思いますが、術者の緊張感が客席に伝わりました。スティ−ルは、かなり目立っていましたね。ただ、フィニッシュの大きな傘の出現には、ビックリしました。
*吉岡 有香子(早稲田大学マジッククラブ)
カ−ドプロダクション
難しいテクニックを安定して演じていたのは、相当な練習の跡が見受けられます。手順では、ミリフラを使った部分が独創的できれいでした。テクニックについての細かいことですが、ファンプロダクションの時のバックパ−ムの角度にもっと注意を払って欲しいと思います。私の席は、2階席のほぼ中央の良い席でしたが、ファンを開く瞬間に肝心の部分が丸見えになっていました。もう1点コメントすると、全体的に表情が乏しい気がしました。
*佛坂 靖之(杉並奇術連合)
フル−トのアクト
佛坂さんおなじみのパントマイム風のコメディ−です。今回の演技では、BGM、メガネ、アンコ−ルの場面に新趣向があったと思います。ただ、何度も見ている人が多い、このテンヨ−大会の場では、いまひとつ観客の反応が弱い気がしました。また、アンコ−ルの場面はやはり逆効果でしょう。
*永田 良一(早稲田大学マジッククラブ)
シンブルとウオンド
この演目は、かつて軽快なテンポとス−パ−テクを駆使した学生特有の演技を何度も見ていたので、今回はちょっと平凡な印象でした。
*江沢 ゆう子(八王子マジックグループ)
3本リング
小道具、コスチュ−ム、ポ−ズ、手順の工夫など、随所に気配りが感じられました。HIROさんの印象とは違って、ファッションも絵になっていたと思います。手順面では、リングとケ−ンのからみは新趣向で面白いと思いました。
*松田 大輔(東京大学奇術愛好会)
地下鉄の乗客のパントマイム
昨年のジャグリングに続き、最近の東大奇術愛好会には、ユニ−クな人が現われますね。マイムは独学だそうですが、とても上手でした。今後、是非マジックの要素を取り入れて新しいアクトを完成して欲しいと思います。
*藤原 良雄(八王子マジックグループ)
シルバ−ボ−ル
黒のタキシ−ドをピシッと決めて、気合いの入ったステ−ジでした。P&A(トライアンフ)さんの本格的演技は、今回私は初めて見ました。音にこだわるトラさんらしく、BGMはとても良かったです。演技の方は、オ−プニングのウオンドの思わぬトラブルにちょっと動揺されたのではないでしょうか。全体的に間の取り方に余裕がなかったように感じました。また、シルバ−ボ−ルは、シ*ルがかたいのかボ−ルが増えたという印象が弱かったです。
なお、オ−プングの時、ホリゾントライトを消して、スポットライトだけだったのは、術者の指定ですか?それとも照明ミスですか?スポットだけでは暗すぎてよく見えません。
*山本 暁(専修大学マジックサークル)
インコプロダクション
キヤンドル、ス−パ−ボ−ル、ヨ−ヨ−を織り混ぜたバランスのとれた手順でした。インコのプロダクションは決して、悪くはないのですが、やはりクライマックスにはハトを期待してしまいますね。ステ−ジマナ−は堂々としていて、良かったと思います。
なお、あかねさんからコメントがあったように、出現したインコが私の席まで飛んできました。
テンヨ−ディ−ラ−の麻生良方さんから、下記の新製品が紹介されました。
・スイ−トナイトメア−(2800円)
・マジシャンロ−ズ(4500円)
・バ−チャルコイン(1200円)
・ピラミッドミステリ−(1500円)
・バイオ・イリュ−ジョン(1500円)
・クリスタルボックス(800円)
また、この後マジックラビット(6500円)を考案した、鈴木徹さんの素晴らしい演技が続きました。ご存知のない方のために、ちょっと紹介しますと、かわいい縫いぐるみのようなウサギが、お客さんの選んだカ−ドを当てるというものです。
鈴木さんの演出はとても面白く、またウサギの動きがとてもリアルでかわいいものでした。私は、この商品を7月のFISM会場で見ていましたが、その時点では購入を見合わせていました。しかし、今回の鈴木さんの演技を見て、迷わず購入を決めました。
休憩時間にテンヨ−の加藤英夫さんにお会いできたので、感想をお話していたらディズニ−ランドのテンヨ−ショップでは、リングを使った別の面白い演出が見られるとのことでした。
以上が、第1部の演技ですが、最後にダ−ク広和さん司会ぶりについて、感想を述べたいと思います。
テンヨ−大会の司会者は以前は、さきほどの麻生良方さんが担当されていたと記憶していますが、最近ダ−ク広和さんがよく登場します。たしか昨年は、アシスタントの女性がいたと思いますが、今年は単独な司会であり、ある意味では、司会者としての資質が問われる立場でした。
結論から述べると、問題点あり、ということです。
まず、演者を紹介するとき、何度も演目名そのものを言ってしまいました。これは、マジシャンの感覚では考えられないことで、プログラムにも事前に演技内容が分からないように、アマチュアクラブの発表会でも気を使っているのが普通です。
同様に、演者を紹介するとき、出演者に事前に質問した回答内容をそのまま、棒読みしていた点です。中には、出演者のプライバシ−に触れる内容を不用意に話題にしていたのも不快に思いました。
第3部での、松旭斎広子師の紹介では、公私混同的に「次は、松旭斎広子先生です。」と言っていたのもちょっと違和感が残ります。
また、シンブルを演じた永田さんの演技の後に、彼のネタ場付きのテ−ブルの裏側を観客にわざわざ見せるという暴挙?を演じました。司会者の言い分では、「みなさん、見て下さい!今どきの学生でも彼のような苦学生もいるんですよ−」というわけですが、私は「この人一体なに考えてるんだろ。」と呆れていました。
というわけで、今回はいつになく司会者の問題点が気になりました。
*暗黒魔術団
ダ−ク広和率いるアメリカンポップスバンドの演奏とマジック
ボ−カル、踊り、演奏ともしっかりしているバンドで、なかなか楽しめました。中でも、関心したのは、ボ−カルの島敏光さんの司会ぶりです。リズム、ト−ン、声質が耳に心地よく、メリハリのあるおしゃべりは、第1部のマジックショ−の司会をして欲しいほどでした。マジックのほうはほとんど見るべきものはなかったですね。
*HIRO・SAKAI
今回の彼のステ−ジは、内容、演技とも最高の出来でした。まるで、ニュ−ヨ−クのブロ−ドウエイあたりで、洗練されたショ−を見ているような感動を覚えました。
(1)コンピュ−タ画面を使ったカ−ド当て(新作)
最新のコンピュ−タグラフィクスを用いたマジックの演出は、おそらく史上初の快挙です。私もコンピュ−タ技術者なので、いつかこんな作品を作りたいと考えていましたが、先を越されました。ただ、ちょっと気になったのは、裏方さんの存在を無防備に観客に示していた点です。操作の都合上止むを得なかったのかも知れませんが、トリックの完全さにこだわっている彼の演出にしては、疑問が残りました。
今度、機会があったら本人に直接聞いてみたいと思います。
(2)鏡台を使ったイリュ−ジョン(新作)
このイリュ−ジョンも独創的で、大変不思議なマジックであり、もしデビッド・カパ−フィ−ルドが見ていたら、すぐさま自分のショ−に取入れるのではないかと想像するほど素晴らしいものでした。
鏡に写った品物の鏡像が本物に変わってしまうというアイデアそのものは、古くからあるものですが、このようにステ−ジのイリュ−ジョンとして完成させたのは彼が最初ではないでしょうか。また、アシスタントの女性のダンスステップの見事さも一段と効果を高めていました。
一つだけ、コメントすると、女性の出現は効果的なのですが、その分、前のイフェクトのネタを想像させてしまうという欠点がないでしょうか。この点も本人に聞いてみたいところです。
(3)座禅スタイルの人体浮揚
この人体浮揚は、カパ−フィ−ルドも演じているものですが、実に不思議ですね。まったくタネが分かりません。創案者は、HIRO・SAKAIさんなんでしょうか。
ところで、初めの部分では、ホリゾントライトがついてなかったため暗くてよく見えませんでした。これも術者の意図なのか照明ミスなのか、気になるところです。
・カズ・カタヤマ
ミリオンカ−ド、ステッキ、ビリヤ−ドボ−ル、シルク
お得意の手順ですが、不調を伝えられたFISMコンテストの時と比べて、今回は非常に良い出来だったと思います。私は、両方の演技を見ていますが、一番大きいのはステ−ジの大きさの差だと思います。この三越劇場は、カズ・カタヤマさんのようなスライハンド系のマジシャンにとっては、最適な会場な気がします。同じ演技でも、FISMの横浜パシフィコの会場では、とても小さく迫力にも欠ける印象を受けました。
・松旭斎広子・正恵
木の葉カ−ド、人体出現、胡蝶の舞、紙幣焼き
オ−プニングの木の葉カ−ドは、昔のやり方のためか、現代の方法より、余分な手の返しが目立ちました。また、長年アシスタントを勤めてきたと思われる男の後見さんを興味深く拝見しました。演技中に広子師が「〜ちゃん」と声をかけた時にはちょっと戸惑いました。後から、あれでも何十年前は、おかしくなかったんだろうな、と一人納得しました。
以上で、今回のレポ−トを終ります。
来年も、見に行くと思いますので、またお会いしましょう。
1994.9.18 スティング(MHB01374)
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Update: 1998/1/1