Dr. Tashiro のマジックレポート (No.4)

第45回 全国奇術愛好家懇親会

《2月20日(日)》

(1)ディーラーズショー

(2)レクチャー


(1)ディーラーズショー

 私たちの部屋の向かいが、古賀忠雄さんらの部屋でもあり、その部屋に児玉恭治会長やご子息、ゲストの小林浩平さん、ミッドナイトパーティーの出演者らがおしかけられ、そこで19日は夜更けまでお酒を呑んでいた。せっかくすばらしい温泉宿に宿泊しているのに、私の回りで温泉に入られた方はいなかった。(汗)飲み会の後は、私の部屋で、G&G二木(銀座8丁目。03-3571-7855)というマジックバーをされている二木正孝氏らに、村上正洋氏がレクチャーを始められ、結局寝たのは朝日を拝んでからであった。従って当然のことながら、翌朝8時からというディーラーショーにはとても参加することは出来なかった。

(2)レクチャー

 日本奇術協会会長の松旭斎すみえ氏のレクチャー。ステージに立ってのレクチャーであり、参加者が多数で、参加者との距離もあり多少やりにくかったのではないか。

(1)「こんないいマジックがもう出来なくなりました。」と言って、レコードとレコードジャケットのマジックの実演。解説はなかった。レコードジャケットには切り込みの模様がたくさんついており、つまり極端に言えば網のように向こう側が透けて見える。このようなジャケットにレコード(LP盤大)を入れる。切り込みの「窓」を通してレコードの黒いところがところどころ見えている。中央の穴に赤いシルクを通すと、瞬時にレコードの色が赤くなる。ジャケットよりレコードを引き抜くと確かに赤いレコードに変化している。同様に、黄色、緑にレコードの色を変えて見せる。最後は3枚のシルクを同時に穴に入れると、中のレコードは消えてしまう。

(2)もみ出しシルク。シルクをまるめて、さらにその上からもう1枚のシルクを巻くという具合に3枚のシルクのボールをつくる。これをての中で少しずつほぐしていく。すなわち「もみ出して」いくわけだが、手を横に上げて演技をするときは肩より手を高く上げる、手を前方に出しての演技のときは肘の高さにする、という点を強調された。横に手を高く上げると「10歳くらい若く見える」とのこと。正面での演技は演者の顔を隠さないことが大切なのだとのこと。もみ出したシルクは上手のカゴに入れていき、全て出したら、カゴに仕込んであるファンテンシルクのネタをスチールするのである。出現した6枚のシルクを取り上げる、という動作でスチールするわけだが、「『がばっ!』っと取ってはいけません。5枚のシルクと一緒にネタを取り、残り1枚のシルクは床に落とすくらいの気持ちです。落ちた1枚のシルクを拾って、ネタ入りの5枚のシルクとあわせます。ネタを取ってしまえばこっちのもんですから、ゆっくりステージの正面まで出て、ファンテンシルクを広げて見せるのです。」と、おっしゃっていた。尚、ファンテンシルクのフィニッシュのアイディアとして、シルクを全て結んでおいて、一番中心のシルクには目玉クリップをつけておく。クリップを投げるとその重みで、つながっているシルクがテープ状に流れ落ちる、という現象を見せて下さった。もみ出しシルク全般は、会場のお客さん1名にステージに上がってもらい、その方に指導するという形をとって、わかりやすく指導された。

(3)スポンジボール。1つのボールが2つに分裂。そのうち1つがウサギ(おとうさんウサギ)になる。もう1つのボールを手に握ると小さいウサギ(子ウサギ)がいくつも出てくる。最後に大きいウサギ(おかあさんウサギ)が出てくる。幼児向けの演出とのこと。また、数色のスポンジで手のひら大の花をつくり、赤いボール(リンゴ)、オレンジのボール(みかん)などとともに、「花と実」をテーマにした演出も見せて下さった。また、4つのボールを手に入れて、手を開くと「4」の形をした大きなスポンジ1つになってしまうといった演出も紹介された。

(4)詳細不明だが、ティッシュペーパーでボールを作り、ピストルでうつと、ピストルからは紙吹雪がちり、手の中のボールは消えてしまうといったマジックを解説された。ボールをつくるときに、一番端っこだけすこし残して後は千切って(ボール本体は)処理してしまうといったものであった。紙吹雪が散るピストルというのの紹介が中心だったような気もする。

感想:

 レコードマジックは、初めてみるもので大変不思議に思えた。現在CDを用いたマジックが行われているけれど、これも近い将来新しいメディアが出現するであろうことを考えれば、いつまでできるかわからない。レコードマジックはマジックと相性がいい素材なのか、これまで多くのマジシャンにより様々なレコードマジックが演じられてきた。女性マジシャンダイアナ氏のレコードマジックを少年時代に見た印象は、今でも私の頭の中に強烈に残っている。こういったよいマジック、よいルーティンはきちんと保存されなければもったいないと思う。

 もみ出しシルクは、すみえ氏ご自身が苦労されてルーティンを作り上げられたとのことで、懇切丁寧にまた大切なコツなども惜しまず解説して下さり、大変貴重な体験をさせてもらえた。シルクプロダクション自体は昔からあり、ネタのスチール方法も色々研究されてきたようであるが、見せる雰囲気やタイミングなどでよほど考えた演出をしないとあまりに単調であり面白くない。その辺りを、氏独特のやり方で解決され商業演芸の中で演じても十分通用するルーティンを組み立てられたという点は高く評価されるべきであると思われる。

 スポンジボールの演出の工夫や、紙吹雪の出るピストルの紹介も、参加者の皆さんには大いに参考になりまた刺激にもなったようである。プロであれば、子供さんからお年寄りまで様々な年齢層のお客さんに対応したショーを考える必要があるのだな、ということもあらためて認識させられた。スポンジボールは、工作の方法まで詳しく解説して下さり、自分なりに工夫してみようかという気になった。また、紙吹雪の出るピストルは、東急ハンズなどでも売られており、私も買うには買ったが、そのままパッケージも開けずになっている。氏の演技を見て、改めて使い道を考えてみる気になった。

 氏のレクチャーはビデオになっており、ネタの仕込みから細かい演技上の注意点、またスポンジボールでは工作をするための材料選びから工作のコツ、効果的なルーティンなど、きわめてわかりやすく解説されているとのこと。レクチャー終了後に、道具やビデオの即売もあったが、アイビデオ(03-3426-0177)に問い合わせれば、後からでも購入可能なのではないかと思われる。ショーのときに見せつけられたすみえ氏の貫禄にも感じ入るところが多々あったけれど、このレクチャーで見せて下さった、昔ながらの明るくてきぱきしたご様子もとても魅力的で今後もたくさんのファンの皆さんを魅了し続けていかれれるのだろうと思わずにはいられなかった。

《おわりに》

 あっという間の2日間であった。日本奇術会の長老(?)の皆さんもお元気で、やはりマジックは健康維持に有効であることを確認することができた。私が9歳の頃からお世話になっている渡辺さんが会場内を走り回られるご様子は当時と全く変わらない。また、現会長の児玉恭治氏のご子息(新橋で引き続き「マジック」というお店を経営)の裏方さんとしての健闘や、若手ゲストの大活躍など、新人のがんばる様子もそこここで目にすることが出来、気持ちの良い雰囲気であった。裏方といえば、今回は藤本明義さんがステージ回りの裏方を切り盛りしておられ、大忙しのご様子だった。さらには長老マジシャンのリクエストに応えてコンビニまでドリンクを買いに駆け回ったりもされ、ただただ頭が下がるばかりであった。藤本さんのような有志がいらっしゃるお陰でコンベンションというのはスムースに運営できるのだなあと改めて感心させられたとともに、協力者が沢山出てくるこういった環境というのは、児玉恭治会長を初め多くの執行部の皆さんのお人柄が暖かくまたすばらしいものであるからこそであると確信した次第である。

 季節柄会場の庭園には梅が咲き乱れ、遙かに臨む海原から渡ってくる潮風にも豊かな梅の香が含まれており、それが会場内にもほのかに漂っているような気さえした。これからは記念すべき50周年大会に向けてさらに多くのマジックファンがこの大会に参加されるよう、特に若い皆さんが奮って参加されるよう、私も側面的な協力を惜しまないつもりである。そんなファイトが体中からこみ上げてくるような気にさえなった、すばらしい大会であった。


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Update: 2000/4/4