第7回八王子マジックグループ発表会
「ふしぎな・ふしぎな・140分」日時: 2001年6月30日(土) 13:00〜15:30
会場: 八王子市芸術文化会館いちょうホ−ル(大ホ−ル)
主催:八王子マジックグループ
後援:八王子市教育委員会
社会福祉法人八王子市社会福祉協議会
協力:マジックグループ青梅
Update: 2001/7/8
個人的には、従来方式の方がよいと思いますが、12時30分からの開場は、混雑がなく、とてもスムーズでした。
出し物は、リンゴ、グレープフルーツ、バナナ、のべシルク。オープニングに相応しい軽快な演技でした。手作りのテーブルも良かったと思います。フィニッシュでセイロを両手に持ってあらためなかった点が惜しまれます。また、BGMに歌つきの曲を使用されましたが、観客の意識が歌の方にいってしまう場面があり、選曲で損をした気がします。
ブレンドシルク、ファンカード、アピアリングケーン、カラーチェンジング、3本リングと盛りだくさんの構成でした。それぞれ、しっかりとした演技でしたが、出し物を絞ってコンパクトの手順にした方が、観客の印象は良くなると思います。アピアリングケーンは、前の演者も使用したので、現象の重複が気になりました。どちらかというと、前の演者のアピアリングケーンは、のべシルクを出すためのものなので不要だったのでしょう。ところで、リングの光り方がとても目立っていましたが、何か加工があったのでしょうか。
今年、商品化された特大の1万円札デザインシルクを使われていました。UGMの商品と手作りの道具をうまく組み合わせた手順だったと思います。特に紙幣印刷機の道具はよく出来ていました。ところで、印刷機から出てきたお札の後、「本物だよ」という紙を出して、客席を沸かせましたが、その後のファン状のお札は、光沢がありすぎて、いかにも偽物のように見えたので違和感がありました。また、BGMにカラオケの曲を使われていましたが、ちょっと不自然な気がしました。
チキチキバンバンの曲にのって、とても楽しいステージでした。衣装と道具、出し物に統一性があり、素晴らしいと思いました。オープングで演じた「水と新聞誌」でトランブのデザインシート(夢工房ASAI製)を使用したのは、とてもよいアイデアでした。
オープニングは、スクリーンの陰から三味線の演奏。沖縄の民族衣装に身を包み、道具の一つひとつにも情緒があって、味わいのある演技でした。リボンを取り出す2枚のプレートや、リボンの連結に使用した糸車風の道具は非常に珍しいものでした。なお、ファウンテンシルクをテーブルの上から堂々と取り出していましたが、一工夫欲しいところです。また、タイトルの「太陽がいっぱい」は、イメージに合っていないように思いました。
紅白の連理の紙、白糸、紙吹雪、特大ファンファンの出現。
最後にファンファンを出現させたのは蛇足だと思いました。紙吹雪で終わった方が余韻が出ます。和妻の場合は、無理に新規性を出す必要はないように思います。
日本セイロから大量のシルクのプロダクション。フィニッシュは、中・大ランタンのダブルクライマックス。
衣装、道具、音楽、表情、動き、手順構成など全てに渡ってコーディネイトされた素晴らしい演技でした。特に間の取り方は見事です。1部で私が二重丸を付けた演目です。
今回が初舞台とのことでしたが、丁寧に演じられ、最後はキッチリきまりました。上手から、フラワーリングをお手玉のように投げ上げながら登場しましたが、これは構成ミスだと思います。登場からのオープニングは難しいだけでなく、ステージ上で物を投げるのはミスの危険性が高く、実際2度もリングを落としてしまいました。ここは、板付けから開始して、精神的に楽な動作から始められた方が良かったと思います。
ビラミッドから火の出現。羽扇子からグラスの出現。赤、緑までは、羽の色と液体の色が合っていたのに、最後だけ黄色ではなくピンクの羽扇子だったのは惜しいところです。また、腰ネタのスティールは、かなり目立ちました。横に向きすぎているようです。
2個のコーンを使ったボールの移動現象。地味な演目ですが、とてもよく練習された跡が感じられ、爽やかでスマートな好演技でした。
エンディング付近でのボールのロードは、手の角度が甘く、ネタグレしていたのが惜しかったです。
ソムリエに扮して、ワインボトルを次々に出現させます。畳み掛けるような手順構成は素晴らしいと思います。後で、打味さんは、昨年2月の第45回全国奇術愛好家懇親会(日本奇術会主催)コンテストで最優秀賞を受賞されたと聞きました。
私見では、手順構成の中で、テーブルからボトルとグラスが瞬間的に出現する部分はカットした方がよいと思いました。このネタは、いかにも作り物という印象が強く、かえって逆効果のように感じます。また、この演目のBGMの音量は大きすぎて気になりました。
幕前でのチャンチューブ(2本筒)からの人形のプロダクションの後、幕が開いて、人形の家(イリュージョン)を演じられました。征矢さんも、1999年第18回「奇術を楽しむ集い」コンテストで優勝された実力派です。1部のトリを堂々と務められました。アシスタントは若く美しい女性で、華やかなステージの雰囲気を高めていました。気になったのは、剣を刺すのに時間が掛かり退屈だった点と、奇声の入ったBGMに不快感を覚えた点でした。
江沢さんは、これまで数々のマジックコンテストに出場され、輝かしい成績を収められている女性マジシャンです。今回は、ここ数年演じられている「江戸の華」を基調にして、さらに意欲的な手順を組み立てられました。透明の容器からのミリフラの出現と胡蝶の舞のイフェクトは、私にとっては新鮮な部分でした。強いて注文をつけると、後半の2段階の衣装替えからクライマックスへの素晴らしいテンポに対して、オープニングの盃のアクトが長すぎる印象です。この部分はもっとあっさりして、次につなげた方がよいのではないでしょうか。
八王子マジックグループのホープとも言うべき、新星マジシャンのデビューでした。女性の多いこのクラブにとって、スライハンドの演目が加わったのは願ってもないことのように思えます。難しいボールの演技を見事にこなしました。きっと相当な練習を積まれたのでしょう。
さて、将来性のあるマジシャンなので、あえて注文をつけたいと思います。まず1点は、横を向いた時の観客側の足の位置が横に向きすぎているところが何箇所かありました。このため、両脇の観客からは現象が見難いという欠点があります。次に、手順上、現象が分かりにくい印象があります。これは、カラー(赤)ボールの使用個所が何回か出てくるのも一因かも知れません。私の考えでは、ボールの出現・増加・消失といった基本現象は白いボールで行い、変色現象のところだけ赤いボールを使うといった構成にした方がすっきりすると思います。なお、フィニッシュでテープに変えるところは、なんとなくしっくりしません。ランスバートンの大きなゾンビボールを銀のテープに変えるクライマックス手順は有名ですが、小さなボールがテープに変わるという現象は効果があるとは思えません。
洒落た金属の椅子をマジックテーブルに使うアイデアがとても良いと思いました。花束、ミリフラ、黒のコスチュームがとても似合っていました。
ただ、せっかく上手からの登場でしたので、何か現象を起こしながら歩いてきた方が効果的です。また、全体的に手順が長い印象でした。
会場の大きさを考えると、円板の直径は、もう一回り大きい方が見栄えがすると思いました。BGMはパソドブレのリズムでしたが、少し忙しなく落ち着かない印象がありました。また、円板の位置が入れ替わるクライマックスの前に、ロープの両端を右手に持って、くるくる回す動作がありますが、これは北見マキさんの方法のように助手にロープの端を引いてもらう方が現象がはっきりするように感じました。
9名の会員有志による南京玉すだれは、賑やかで壮観でした。江沢さんの口上も声がよくとおり良かったです。なお、招待席には、師匠の芝辻たかしさんのお顔も見えました。
この演目のBGM「Go for it」は、私も好きな曲でよく使用しますが、この方の演技には合っていないような気がしました。さて、マジックですが冒頭にネタを床に落としてしまうというアクシデントがありました。一瞬、動転したような表情が感じられましたが、うまくフォローし最後まで演じられました。すごいなと思いました。
ところが、後で他の人から、あれは計算づくの演技だったことを指摘され、ちょっとがっかりしてしまいました。たしかに、タイトルをよく見るとその通りだったようです。ただ、この手法は奇をてらうもので、非常に後味が悪い気がしました。マジックは心地よく騙されたいものです。
上手から3輪車に乗って登場。ピエロの衣装をまとった演者のユーモラスのアクションに客席が大いに沸きます。すごい演技力だと思いました。選曲もよく、とても楽しい皿回しの芸でした。
上手から花束を持って登場。透明なシートの小片を重ねると大きなラップになる。その中に花を入れると灯りがつく。紙で花の形を作ると空中に浮揚する。大きなグラスの中の花が一瞬にグラスいっぱいに増加してフィニッシュ。
街灯と洒落たテーブルを配置した舞台設定、照明、音楽、衣装が見事に調和し、まるでパリの街角にいるような気分になりました。手順も独創的ですが、何といっても上品な仕草が際立っていました。演者の表現したい世界がストレートに伝わり、とても感動しました。今回のショーの私のベストワンは、この演目でした。
三つ折りスクリーンからのパラソルのプロダクション。華やかで気持ちのよい演技でした。実演経験が豊富なことを感じさせられました。
BGMの音がこもっていたのが惜しい点でした。また、エンディングの雷の効果音は、ちょっと違和感がありました。
堂々の大トリを務めたのは、成長著しい藤本明義さん。国内外のコンテストでの豊富な実演経験に裏打ちされたテクニックと演技力は素晴らしいです。今回は、カードマニピュレーションをたっぷり見せてくれました。ワンハンドサークルファンも見事に決まりました。後半は、ゾンビボールと思いきや、なんとテーブルの方が浮いてしまうというユニークな手順。また、今回感じたのは、表情の豊かさがプロの芸人の域に達していたことでした。唯一の不満点は、タイトルの付け方です。これは、学生の発表会でよく見られる意味不明なものでした。
初めての司会ということでしたが、無難に務められたと思います。ただ、1部、2部共に各演目ごとに紹介するというスタイルでしたので、全体的に一本調子の印象がありました。第4回発表会の時は、1部は、ナレ−ションによる演目紹介、2部は、パントマイムによるつなぎ、3部は、司会による進行という趣向がありましたが、何か変化が欲しい気がします。ちなみに、YMGでは、3つか4つの演目をまとめて紹介し、演目間の流れを重視するスタイルを採っています。
7回目の発表会でしたが、内容はますますレベルアップした印象で、とても楽しい気分に浸ることが出来ました。この会の特徴でもある女性会員の多さは、22演目中、女性が17組という数字に表れています。一方、男性陣も個性的な演者を揃えており、全体としてよくまとまっています。
例年、構成・演出面では何らかの趣向が見られましたが、今年は一般的な司会進行でした。
中幕を使っていたのは、1部のトリの前芸だけでした。演目によっては中幕を使い、次の演目のセッティング時間を短縮するともっと流れがよくなると思います。
また、袖から登場する演者が目立ちましたが、いくつかの演目は板付けからのスタートの方がよかったと思います。具体的には、1部1番、2番、8番、9番、2部3番、4番、6番です。
音楽が鳴った時から、観客の意識はステージに注目します。ここで、袖から中央までただ歩いてくるだけだと単なるロスタイムになってしまいがちです。
今回は、一部の演目で録音状態、音量が不適切なものがありました。
録音状態が悪かったのは、1部2番、2部9番。音量が大きすぎたのは、1部11番でした。
全体的に美しい照明効果が出ていました。特に秀逸だったのは、2部8番(街角で)です。
1部は、例年の看板がなかったので、舞台上部の空間が広すぎる印象でした。一方、2部は手作りと思われる菱形の吊るし物が舞台を飾り、とてもよかったと思います。
同じアマチュア社会人クラブで活動する私にとって、大変刺激になるマジックショーでした。来年のYMGの発表会では、何をやろうか、じっくり考えたいと思います。
2001.7.3 中村 安夫
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Update: 2001/7/8