Lance Burton: Master Magician
日時:2000年5月3日(水・祝)・4日(木・休)・5日(金・祝)
●昼 開場14:00/開演15:00 ●夜 開場18:00/開演19:00
会場:東京国際フォーラム ホールA
入場料:S席10,000円 A席9,000円主催:テレビ朝日 後援:日刊スポーツ新聞社 文化放送
SUPPORTING RADIO:J-WAVE 協力:ぴあ問い合わせ先 M&Iカンパニー 03(5453)8899
●チケットぴあ03(5237)9999/03(5237)9966(Pコード500-230)
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Update: 2000/5/17
Rev.1 2000/5/7
2000年のゴールデンウィ−クに、ランス・バートンの日本公演が奇跡的に実現しました。彼はラスベガスのホテル・モンテ・カルロと13年間の独占出演契約を結んでいるため、日本での公演は不可能と言われていました。私も1997年11月にラスベガスのランスバートン・シアターで観て以来の機会となりました。以下は、5月4日昼の部のショーレポートです。
幕開けは、霧に包まれた橋のほとりの街灯前のシーンから始まります。ビバルディの四季のテーマが流れ、ランス・バートンが登場します。
白い手袋を脱いで空中に投げるとハトに変化し、ハトは大きく弧を描いて街灯に止まります。この後は、マフラーからのキャンドルの出現、新聞紙の復活からハトの出現、タバコ、ミリオンカードからハトの出現といったFISM'82グランプリ受賞のルーティンが続きます。
最後に出した一羽のハトを空中に投げ上げると、真っ白なシルクに変化し、手に受け取って、ゆっくりと胸ポケットに入れると、ランスは客席にニッコリと微笑みます。(注2)
三つ折りスクリーンから美女が6人出現。美女が箱の中に入り消失。
紙ナプキンから小鳥(インコ)の出現。球状のケージに小鳥を入れて、フローティング。布を使って、ケージの空中浮揚、フィニッシュは銀のテープに変化。
巨大な蓄音機のコーンに女性が入ると消失。その後人体交換。
男の子、女の子をステージに上げる。帽子から玉子が次々に出現。
・巨大なお手玉
・目隠しして、剣のジャグリング
・リンゴを食べながらのジャグリング
・一輪車
観客に黒い衣装とシルクハットを被せる。二人羽織のように後ろからランスが両手を出し、マジックを演じる。ケーンの消失ほか。
3人の観客にカードを覚えてもらう。ジャンボカードを使って、そのカードを当てる。観客のカードが次々に上に昇っていく。最後のカードは、意外な結末へ。
ランスはアメリカ先住民の祈祷師の服を着て、コーン状のテントの入り口に立つ。布を自分の前に広げると、布の中に何かが入る。それは、奇妙な動きで舞台の左へ。同様に二つ目の物体が舞台の右へ。最後に三つ目が舞台の中央へ動き出す。ランスはテントの中に入り、入り口を閉じてしまう。しばらくして、左右の布から美女が現れる。美女が真ん中の布を取ると、テントに入ったはずのランスが出現。
中が透けて見える大きなガレージにスボーツカーが入ると一瞬のうちに消失。
シルクから鳥かごに入った小鳥(インコ)を出現させ、さらに瞬時に消失させる。次に、客席から、4〜5人の子供たちを呼び寄せると、次々に20人ほどの子供たちが舞台に上がる。再び鳥かごを取り出し、子供たちに鳥かごの上下左右を手で押さえてもらうが、一瞬に消えてしまう。
観客から1枚の白いハンカチを借りる。ハンカチの隅に結び目を作ると空中に浮揚する。リングをハンカチに通し、どこからも吊っていないことを示す。次に大きなガラス瓶の中にハンカチを入れて栓をするが、ハンカチは瓶の中から飛び出してしまう。再び、ハンカチを瓶に入れ、さらにピンク色のハンカチも入れて栓をすると、瓶の中の2枚のハンカチは踊るように動きだす。最後に2枚のハンカチが瓶の外に飛び出すと、3枚の子供ハンカチが生まれ、一緒に踊っている。
左右二組の縦長の箱の中に、それぞれ男女の助手が中に入る。プレートが差し込まれ、箱は4等分される。分離された箱は順番を変えて再び積み上げられる。模様が合わないので、左右の模様を入れ替えて、箱を開けると、男女の衣装が交換されて助手が中から出てくる。
客席から一人の女性を選び、舞台に上げる。二つの台の上に板を載せ、その上に女性を座らせる。二つの台を後方へ移動するが、女性は空中に浮かんだままである。大きなリングを女性の周りにくぐらせる。最後に台を元に戻し、女性を地上に降ろす。
人体交換を舞台の裏側から見せるサッカートリック。
王宮を舞台に繰り広げられる華やかな宴。美女が踊り、アヒルが現れ、ユーモアを誘う。最後は、ランスと怪人とのフェンシングシーンに続く人体交換。
(上演時間:休憩を含んで約2時間)
今回のショーの見所は、何と言ってもオープニングのハトのプロダクションでしょう。約12分間の一連の演技は、FISM'82(スイス・ローザンヌ大会)でグランプリを獲った有名な手順です。ランス・バートンが今もなおこの手順を大切にし、なおかつ完璧な演技を見せてくれたことをとても嬉しく思います。間違いなく、現在世界最高峰レベルの正統派スライハンド・マジックと言えます。
その後のショーの構成は、ラスベガスのランスバートン・シアターで演じられている公演をほぼ再現していますが、いくつかの点が異なっています。
以前、私がラスベガスで観た時は、三つ折りスクリーンではなく、小さな旅行用トランクから美女が出現していました。
この演目は、ありませんでしたが、卵になるハンカチが演じられていました。
「リンゴを食べながらのジャグリング」(注1)の代わりに、「火のついた3本トーチのジャグリング」や「ボウリング、トーチ、電動ノコギリのジャグリング」がありました。
これは、初めて観ました。日本での公演用に二人羽織にちなんだ演目を追加したのでしょうか。(注2)
これも初めて観た演目です。(注1)
これは、昨年日本でも放映されたTVスペシャルNo.3"Lance Burton: Master Magician: Top Secret"に登場した演目です。(注1)
このマジックの原型を初めて観たのは、20年ほど前のダグ・ヘニングのTVスペシャルだったように思います。デビッド・カッパーフィールドも "The Big Black Box"(MDC13-1991) というタイトルで演じていました。今回のランス・バートンのバリエーションは、アメリカ・インディアンの衣装を巧みに取り入れた秀作だと思います。
ラスベガスの会場では、自動車が空中に飛びます。残念ながら、この仕掛けは、日本には持ち込めなかったようです。
この演目は、おそらく最新作で、ほとんどの人が観るのは初めてだったのではないでしょうか。(注1)
オリジナルは、前述のダグ・ヘニングですが、私も初めて観た時は、ビックリして、その後長い間その秘密を知ることが出来なかった作品です。ダグ・ヘニングが、今年の2月7日に急逝したのは記憶に新しい出来事ですが、その直後にランス・バートンは公式ホームページ上で追悼メッセージを発表しています。その中で、ランスはダグ・ヘニングから、一つのイリュージョンの実演許可を得たことを明かしました。私は、今回の演技を観て、この「ダンシング・ハンカチーフ」がそれだと確信しました。
ランスは2月9日付けのLas Vegas Review-Journalのインタビューの中で、次のように話してします。
「20世紀のマジックの中で、リストのトップに位置するのは、ハリー・フーディーニ(Harry Houdini) とダグ・ヘニング(Doug Henning) だ。」
こんなエピソードもあります。彼がティーンエイジャーだった1970年代の後半、ダグ・ヘニングのショーを観るためにシンシナティまで車ででかけたそうです。しかし、チケットは売り切れ。そこで、彼は最後列の座席でショーを観たと言います。
というわけで、今回のランスの実演は、ダグ・ヘニングへ捧げるマジックだったような気がしてなりません。
ちなみに、デビッド・カッパーフィールドも1978年のTVスペシャル(MDC1-1978) で演じています。
デビッドとランスという世界を代表する二人のトップマシシャンが同じ作品を演じているのは、とても興味深いことです。
この演目も、以前のラスベガス公演にはありませんでした。4つの箱に切断し、順番を入れ換えるというイリュージョンは、これまでも多くのマジシャンが演じてきました。今回のランスの演出では、さらに人体交換と衣装チェンジが加えられたところが特徴です。
この台の上の板を使った人体浮揚イリュージョンは、市販されている道具でもあるため、アマチュアの発表会等でも時々見かけるものです。ランスの工夫は、大きなリングを浮揚する女性の周りに通すところです。Masked Magician の種明かしビデオでも明かされてしまった方法では、不可能なリングの動きです。(注2)
今回の公演では、15分の休憩を含んで約2時間でした。ラスベガス公演では、休憩なしの1時間半です。短すぎるという人もいますが、私は理想的な長さだと思います。観客がショーに集中できるのは、1時間半ぐらいが限度であり、それ以上になると観るのが疲れてしまうからです。
スライハンド、大道具を使ったイリュージョン、観客を交えたおしゃべりマジックなど、バランスよく構成されてバラエティに富んでいます。また、ジャグリングや動物、子供をうまく取り込んでいます。
特に、子供とのやりとりは、ランスの魅力的な人間性がにじみ出ています。例えば、二人の少年・少女を舞台に上げた時、客席に向かって、「スマイル」「おじぎ」などの動作を仕向けるところや、、子供が鳥かごを押さえる時、「手を挟まないように」とさりげなく注意するところなど、実にいい感じです。
こんなシーンもありました。子供を客席に戻す時、最後に残った子供の背中から紙テープやお土産のトランプを取り出しました。ランスは、子供に向かってこう言います。
「今夜、それと一緒に寝るんだよ。朝、起きたら500円玉が枕もとに置いてあるからね。・・・・・・
というふうにお母さんに言いなさい。」(爆笑)公演パンフレットの中に、ランスが5歳の頃、初めてマジックを観た時のエピソードが記されています。
「ケンタッキーのマジシャン、ハリー・コリンズがステージ上で、一人のシャイな少年の耳から銀の1ドルコインを出して見せた。「こうやってお金が次々に出てくるなんて凄い。それにみんなの人気者になれる!」(その時。少年はこれがトリックだとは知らず、自分の耳からはいつでもコインが出てくると思ったらしい)」
ランスは、この時の体験を今も胸に抱いて、子供たちに夢を与え続けているに違いありません。なお、彼はここ数年、少年マジシャンの育成にも力を注いでいます。今年の後半には、"Lance Burton's Young Magician's Showcase"というTVスペシャルが予定されています。パンフレットに紹介されている7歳の天才マジシャン、ウォレン・ザック・スレイヤーも登場するんでしょうか。観てみたいですね。
今回のランスバートンの東京公演は、期待を裏切らない素晴らしいショーでしたが、少しだけ気になった点を書きます。
最後の王宮シーンは、華やかで良いのですが、マジックとしてのインパクトに欠け、ちょっとあっけない印象は否めません。このあたりは、カッパーフィールドの"Snow"や"13"の感動的なエンディングに比べると惜しい点です。
私は、TVスペシャル"Lance Burton: Master Magician: Top Secret"のエンディング(ミルクとハツカネズミ)を持ってきた方が余韻が残って良いと思います。
テレビ局が主催しているにも関わらす、事前にほとんど宣伝がなかったのは残念でした。当日、会場にテレビカメラが入っていたので、後日放映があるのかと期待しましたが、無いことが判りました。スタッフの方に確認したところ、このテレビカメラは、会場スクリーンのモニター用のもので録画はしていないということでした。
ランス・バートンのライブ公演を、日本で観ることが出来たのは幸せでした。今度、ラスベガスに行く機会があったら、また是非観たいと思っています。なお、ランス・バートンの4作目のTVスペシャル"Lance Burton: Master Magician: On The Road"は、すでに録画撮りが進んでおり、2001年に放映される模様です。次回もNHKから放映されることを期待しています。
(注1)FMAGICのザッツさんの情報によると、昨年3月頃のラスベガス公演では、「リンゴを食べながらのジャグリング」、「ライジング・カード」、「アメリカ先住民の家」、「ダンシング・ハンカチーフ」は、実演されているそうです。
(注2)FMAGICののじまさんの指摘によると、手袋の色は白ではなく紫で、ひっくり返すと裏地が白だったそうです。また、シルクは胸ポケットには入れず、細長いシルクのストールに変化し、首にかけるのがランス風だそうです。また、二人羽織アクトは、ラスベガスでも演じているとのこと。人体浮揚でリングを1回だけ通すのは、ランスのオリジナルアイデアではありません。
1.The
Lance Burton Overture (2:25)
2.The Four Seasons by Vivaldy inspiring the act which made Lance Burton A
World Champion of Magic (8:19)
3.Buckle your seat belts for Lance Burton Air (3:27)
4.Variations on Stravinski's Firebird and Little Elvis floats away in his
cage (4:33)
5.An Unworldly visitor (2:07)
6.The World's Largest Gramophone (1:36)
7.Kids are fun and then some! (0:57)
8.A Dream at least Lance thinks it was (5:57)
9.Grand Prix Surprise (2:25)
10.The Execution, hang around for this, the ending is bright! (2:12)
11.A few liberties with Offenbach's Orpheus in the Underworld (and a peak
behind the scenes)(1:41)
12.You Are Invited to The Masked Ball (1:23)
13.The Waltz of the Ducks (2:09)
14.All Cut Up or the misadventures of a clown (1:38)
15.The Artist and his Model (0:30)
16.Here, There or Where? Amazing transpositions (1:03)
17.Fight to the Finish and the good guy better win! (1:33)
18.Grande Finale and Lance takes us all for a ride! (1:59)
マジェイアの魔法都市案内 (5月5日夜の部)
Conjuror's page (5月3日昼の部)
Conjuror's page (5月5日昼の部)
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Update: 2000/5/17