Update: 1998/1/17
マジックを長くやっていると、いろいろな失敗に遭遇します。数多くあるマジックの中で、自分が実際に演じることの出来るものは、ごく僅かです。また、同じマジックでも演じる場所とか演出の仕方によって様々なバリエ−ションが生れます。
マジックのやり方自体を覚えるのは、一部のスライハンドマジックを除いては、さして難しいことではありません。多くのマジシャンが練習段階で最も気を使うのは、本番通りに何度も演じる事によって、失敗しやすい箇所を見付けだし、その対処法を実演前に検討する点です。
どんなマジシャンでも、本番ではなんども失敗しながら、自分の経験を豊かにし、いわゆる「持ち芸」というものを作っていくのだと思います。
これから、私自身の体験談やアイデアを述べていきます。
1991.4.21 スティング(MHB01374)
もちろん状況にもよりますが、床に落ちたシルクは、やはりなにげなく拾うのが良いと思います。演技の流れをいかに止めないか、またいかにスマ−トな仕草で拾えるかというのも演者の腕の見せどころの一つでしょう。
落ちたものを拾う動作といえば、昨年の杉並奇術連盟の発表会の時、フロタマサトシさんが、一つの方法を紹介してくれました。
ものを拾う時、日常行なっている、両足を揃えて腰を折って拾う動作は、あまりきれいには見えません。そこで、拾う動作に合わせて片方の足を後ろに引くのです。フロタさんは、この方法を欧米マジシャンの仕草を見て学んだそうです。
私の場合は、やや半身になり、膝を十分曲げて、腰から上は曲げないようにしてものを拾うようにしています。
ゾンビボ−ルは私の好きな演目ですので、いろいろな経験があります。本番でボ−ルを落としたことはないのですが、練習段階では数多く落としたものです。
落とした箇所は次のような場面です。
(1)演技中、ボ−ルが半分に割れてしまう。
(2)ボ−ルを左肩の上から背中を通して右腰の横にくぐらせる時、落とす。
(3)フィニッシュでボ−ルを空中に投げあげる時、落とす。
これらの対策としては、
(1)はセロテ−プで補強することにより、防ぐことが出来ます。
(2)と(3)に関しては、十分な練習によりギミックの角度を体得する以外ありません。
また、万一本番で落としてしまった時は、暗転にして終らせるのが最良だと思います。下手にリカバリ−するとネタばらしの危険性があるからです。
これは、ダンシングケ−ンの場合にも言えることですね。
1991.4.7 スティング(MHB01374)
「サッカ−トリックで本当に失敗してしまったら、あなたはどうしますか?」
サッカ−トリックというのは、演者が失敗したようにみせて、実は観客の裏をかき結局は成功してしまうという演出法の一つです。
パントマイム的な演技力が要求され、また通常のトリックにおいても一定レベル以上の技量がないと効果的でないため、初心者には難しいトリックですが、成功した時の観客の反応は絶大なものがあります。
そんなサッカ−トリックの中で私がよく演じるものの一つに「紙玉の復活」があります。現象は、ちり紙を細かく破り、手の中で丸めて広げると元通りに復活してしまうというものです。
サッカ−トリックの演出では、種明しをすると言ってやり方を説明していきますが、誤って、破った紙玉を床に落としてしまいます。しかし、最後に落とした紙玉を拾って、広げると不思議なことに元に戻っているというわけです。
私がこのトリックを覚えたての頃、次のような信じられないミスをしたことがあります。
落とした紙玉を拾って広げたら、なんと破れたままの状態で復活しなかったのです。
このミスの原因は、本番直前に練習したために、前回破った紙玉を替え玉用のタネとして使用してしまったためでした。
こんな時は万事休す、まさにダブルの悲劇です。
みなさんだったら、どうするでしょうか?
1991.4.13 スティング(MHB01374)
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Update: 1998/1/17