デビッドに会えるまで
Update: 2000/1/5
Rev.1: 1999/8/20
世界中のデビッド・カッパーフィールドファンの夢の一つは、「一度でいいから彼と直接話をしたい」ということでしょう。20年来のカッパーフィールドファンである私も、長い間そんな夢を抱いていました。しかし、1999年8月16日、その夢は思いがけずに実現しました。これから、私がデビッドに会えるまでのストーリーを連載形式でお話してみたいと思います。
1.最初の一歩 〜 初めての公式メッセージボードへの書き込み 〜 (99/8/24)
2.遭遇 〜 CDからのレスポンス 〜 (99/10/3)
3.時空を超えて 〜 オンラインあれこれ 〜 (99/11/22)
4.待ちぼうけ 〜 東京公演初日の出来事 〜 (99/11/23)
5.朋友 〜 予期せぬ便り 〜 (99/11/24)
6.運命の女神 〜 Dreams Come True 〜 (2000/1/5)
デビッド・カッパーフィールドの公式ホームページが立ち上がったのは、1997年のことです。このページを初めて見たとき、デザインの美しさと内容の豊富さに驚きました。それ以来、このホームページは、ずっと私のお気に入りサイトになっています。
その中の、メッセージボード(Copperfield Message Board)には、世界中のカッパーフィールドファンが日夜、書き込みを行っています。しかし、1日の書き込みの量が多く、また英語で書かれているため、その内容は断片的にしか把握できませんでした。
今年(1999年)になって、カッパーフィールドの最新ツアー"U !"が、日本にもやってくるというビッグニュースが舞い込みました。そこで、メッセージボードを注意深く読み始めると、アメリカ各地で行われている公演の模様が、毎日のように伝えられていました。
そのうち、書き込み者の中に、Tod という名前と、Chris Kenner という名前の人が、しばしば登場するのに気が付きました。しばらく読み続けているいるうちに、Tod氏は、公式サイトの管理人(Webmaster)であり、またChris Kenner氏は、デビッドのマジックコンサルタントである人物ということが判りました。
いろいろ質問したいことが出てきましたが、やはり英語の壁があり、なかなか英語で書き込む勇気がありませんでした。このメッセージボードは、日本のデビッドファンもたくさん読んでいるはずですが、日本からの書き込みは、皆無でした。
そんなある日、マレーシアの中学生位の少年が書き込みをしているのを読みました。そのメッセージを読んで、いまさらのように気が付きました。
「そうだ、ここにいるのは、英語を母国語としている人たちばかりではないんだ。」
よく見ると、ヨーロッパ系の人たちでも、必ずしも正確な英語を使っていないんですね。でも、コミュニケーションが出来てしまう。それから、しばらくしてです。思い切って英語で書き込んでみようと思ったのは。
そうは、言っても、私たち日本人は、簡単な文章を書くのでも、英語ではなかなかセンテンスが出てこないものです。近くに、翻訳をしてくれる人がいたら、どんなに楽だろう、と思いました。
ところが、身近にいたんですね〜。
そうです。翻訳ソフトです。
最近では、安価なコンピュータ翻訳ソフトがたくさん、市販されています。
現在、私が使っているのは「The翻訳オフィス」です。このソフトは、英日・日英翻訳可能なので、非常に重宝しています。
そこで、Chiris Kenner氏に宛てて、思い切って次のような書き込みをしました。
Re: Can't wait to see Chris Kenner and David in July!!!![ Follow Ups ] [ Post Followup ] [ Copperfield Message Board ] [ FAQ ]
|
DC公式サイトのメッセージボード(BBS)への初めての書き込みの後、しばらくレスポンスを待っていましたが、全く反応がありませんでした。そこで、今度はクリス・ケナー(Chris Kenner)氏に直接メールを出すことにしました。
すると、すぐに彼から嬉しい返信メールが届きました。5月6日のことでした。
内容は、
「今年の日本公演にデビッドと一緒に来日する。間際になったら、どこに滞在するか教えよう。」
というものでした。これは、彼に会えるかもしれないという予感がしました。
それから、しばらくして、日本テレビ系からカッパーフィールド特別番組が放映されました。
「今年も来るぞカッパーフィールド!!一挙大公開スペシャル」(5月29日)
そこで、この情報を、早速DC公式サイトのBBSに書き込みました。
[ Follow Ups ] [ Post Followup ] [ Copperfield Message Board ] [ FAQ ]
|
この情報は、カッパーフィールドの新しいTVスペシャルを待ち望んでいる海外のファンにとってはビッグニュースだったようです。
早速、以下の人たちから問い合わせのメールが届きました。
- Endre Snildal 氏(ノルウェー)
"The D.C. Music Guy"として、有名なカッパーファンの一人です。
- Bruno 氏(アメリカ)
熱烈なカッパーファンだそうです。
- Danny Bowen 氏(アメリカ)
The Master of Illusion と自称する15歳の高校生マジシャンです。
5歳の時にマジックに興味を持ち、7歳からマジックの出演を始めて以来、300回以上の実演経験があるというから驚きです。- Walther Richter 氏(オーストリア・ウィーン)
オーストリアのProject Magicの会長さんです。
ホームページを紹介してくれました。http://www.geocities.com/Vienna/6140
残念ながら、英語ではないので読めませんが、何枚かの写真が雰囲気を伝えてくれます。
さらに、DC公式サイトのBBS上で、思いがけずに嬉しいコメントが付きました。
to yasuo nakamura
[ Follow Ups ] [ Post Followup ] [ Copperfield Message Board ] [ FAQ ]
Posted by CD on May 31, 1999 at 12:49:40: In Reply to: The special TV program of DC in Japan posted by Yasuo Nakamura on May 30, 1999 at 02:29:22:
E-mail me on the day you're coming to the show and your seating locations so I can find you. My e-mail address is Rocketj117@aol.com- I'll try to arrange something for you---
このコメントをつけたのは、CD
というペンネームの人でしたが、なんとカッパーフィールドのツアースタッフの一員である
Cathy Daly
さんという女性でした。私が、東京公演を見に行く日と座席番号を知らせれば、何かいいことが起こるかもしれないというものです。彼女はどうやら、デビッドに私を会わせてくれるつもりのようです。早速、彼女にメールで知らせましたが、少なくとも2回チャンスがあるので、もしかすると、これは本当に実現するかもしれないという気がしてきました。
インターネットの魅力は、世界中からさまざまな情報をいながらにして入手できることです。さらにもっと面白いのは、思いがけない出会いが突然やってくることです。
今回は、そんな出会いのいくつかをご紹介しましょう。
彼は、「第三話」でメールをいただいた外国人の一人でオーストリア・ウィーン在住の方です。オーストリアのProject Magicの会長をなさっているだけあって、カッパーフィールドに関する豊富な資料をお持ちです。
以前のヨーローパ公演のパンフレット、ポスター、雑誌記事、新聞広告などさまざまなグッズを送ってくれました。
私からは、東京公演のグッズを送りました。今年の12月上旬には、ウィーン公演のグッズをまた送ってくれることになっています。もちろん、彼には会ったことはありませんが、お互いに古くからの友人のような不思議な気がしています。いつの日かオーストリアを訪れる機会があったら、真っ先に会いたい人です。
私のサイトをご覧になって、メールをいただきました。以前は、マジックランド主催のレクチャーによく参加されたと伺いましたので、どこかですれ違っているはずです。たぶん、そのうちどこかでお会いできるでしょう。DC公式サイトのBBSにも時々、書き込みされています。
ご存知、Dr.Tashiro のマジックレポートの作者です。田代さんからは、東京公演の直前に、思いがけずに詳細な神戸公演レポートを送っていただきました。その後、10月の世界マジック・フレンド・コンベンションでお会いして以来、親しくお付き合いさせていただいています。近いうちに、レポート第2弾「たっぷりとクロースアップMAGIC No.17 レポート」をお届けできる予定です。
今回の日本公演のパンフレットを製作されたスタッフの方です。素晴らしい出来栄えのパンフレットでしたが、その中に私のコメントも掲載していただいたのは光栄です。次回のTVスペシャルがアメリカで放映されましたら、是非日本でも放送して欲しいと思っています。
こんな風に、素敵な出会いがいろいろあるうちに、いよいよ東京公演を観に行く日が近づいてきました。
1999年8月10日(火)、待ちに待った"U!"東京公演初日がやってきました。ショーの模様は、レポートに詳しく書きましたので、ご覧ください。
ツアースタッフのCathy Daly さんと当日会う約束をしたものの、まだ顔も知らずどういう形で会うのかも分かりませんでした。一応、座席番号を知らせてあるので、多分尋ねてきてくれるものと楽観視していました。そこで、開演前は、できるだけ席にいるようにしました。
しばらくすると、男性スタッフを伴って一人の女性スタッフが、近くの席に近づいてきました。もしかすると、Cathyさんかなと期待していると、一つ前の座席に座っていた人になにやら話し掛けています。見ていると、アンケートを取っていることが分かりました。この公演のことを何で知ったのかとか、カッパーフィールドのことをどう思うかなどと聞いているようでした。
そうこうしているうちに、ショーが始まりました。ステージにはデビッドが登場。客席にもたびたび降りてきて、何人もの観客をステージに連れて行きます。最後の"13"では、ステージ上で消える観客の一人になりたいという願いもむなしく、銀色のボールには、かすりもしませんでした。
さて、終演です。今度は、Cathyさんがきてくれるかなと期待しながら、しばらく席に残っていました。何人かの女性スタッフが会場内を動き始めましたが、一向にこちらに近づいてくる気配はありません。そのうち、ほとんどの観客も退場し、会場に居づらくなってきたので、仕方なく私も席を立ちました。というわけで、残念ながら、この日の面会は実現しませんでした。次は8月16日のチャンスを待つしかありません。
1999年8月12日(木)、第三話でご紹介した中尾 美政 さんから、一通のメールが届きました。中尾さんは、この日の公演後、Cathyさんと会い、デビッドにも会わせてもらったそうです。やはり、Cathyさんを席で待っていたところ、来ないので自分から探しに行ったそうです。私のことも聞いていただいたところ、Cathyさんはいつ来るのかも席はどこなのかも知らないと言っていたという話でした。
「ガーン」
これでは、いくら待っても会えるはずがありません。そうと分かれば、私も自分で探すしかありません。中尾さんのおかげで、私も心の準備ができました。そして、いろいろと聞きたいことを考えながら、8月16日の公演を待つことになりました。
1999年8月16日(月)、2度目の東京公演を観に行った日のことです。開演前は、積極的にツアースタッフに話し掛けようと思いました。まずは、Cathy Daly さんに会おうというわけで、何人かに尋ねたところ、彼女は忙しくてつかまらない、という返事。やはり、開演前は無理かと諦め、終演後に望みを託しました。
ショーの方は1回目より楽しめました。初めて観る衝撃は薄れたものの、細かなところまで行き届いたショーの作りこみは時間を忘れさせるものがありました。デビッドもすっかり日本の観客に慣れ、とてもリラックスしてショーを楽しんでいるように思えました。
さて、いよいよ終演。これがラストチャンスだと思いながら、スタッフを探し回りました。若い女性スタッフを見つけ次第、次々に尋ねていくのですが、Cathy さんはどこにも見当たりません。
「あ〜、もうダメか」
と思った瞬間、トランシーバーを持った女性が私の方に近づいてきました。彼女は、Cathy さんに連絡がとれたと教えてくれました。ほどなく、ステージの脇から一人の女性が足早に駆け寄ってきました。すぐにCathy さんだと分かりました。彼女は小柄で快活そうな女性でした。まるで運命の女神のような気がしました。
"Are you Cathy Daly ?"
"Yes !"
彼女は、すぐに私をステージ脇の方へ案内しました。そして、扉を開けると、そこにはデビッド・カッパーフィールドがいました!
そこは、客席と楽屋をつなぐ秘密の空間のような感じでした。私が手を差し出すと、彼はしっかりと握手をしてくれました。大きくて柔らかな掌でした。
「あなたのTVスペシャルは、日本では1980年に初めて放映されました。私はそれ以来あなたの大ファンです。」
と話し掛けると、彼はニッコリ微笑みました。
「私は、毎日Copperfield Massage Boardを読んでいます。」
と続けると、彼は、"Oh! Chris" と叫びました。振り返ると、そこには、あの Chris Kenner が立っていました。よく見ると、彼はヒロ・サカイ氏と談笑していたところでした。早速、私は、
「あなたのバニッシング・エッグの演技は傑作だった。」と挨拶すると顔をクシャクシャにして喜んでくれました。「私は横浜のアマチュアマジッククラブ(YMG)の会員です。」と言って名刺を手渡しました。
隣で嬉しそうに見守っていたCathy さんが、「そろそろ時間が・・・」という合図を私に送りました。私は彼女に感謝の言葉を送り、デビッドとクリスに別れを告げました。
会場を出た後も、いつまでも爽やかな余韻が残りました。短い時間でしたが、長年の夢が実現した思いでした。この日の体験は一生忘れることはないでしょう。
2000年には、待望のTVスペシャルが製作されると聞いています。また、日本には2001年に再びやってくると言われています。これからも、夢を創造しつづけるデビッド・カッパーフィールドに私は注目したいと思っています。
Copyright © 1998-2000 Yasuo Nakamura. All rights reserved.
Update: 2000/1/5