観客参加型スーパー・イリュージョン

David Copperfield "U! "
 Japan Tour 1999

日時:1999年8月10日(火),16日(月)19:00-21:15
会場: 東京国際フォーラム ホールA
主催:日本テレビ
特別協賛:マツモトキヨシ
後援:J-WAVE
協力:ぴあ
企画・製作:M&Iカンパニー
入場料:12000円(S席),10000円(A席),8000円(B席)

Update : 1999/9/18
Rev.1: 1999/9/3


■はじめに

 デビッド・カッパーフィールドが、今年(1999年)も日本にやってきました。昨年に続く、今年の日本公演では、神戸、名古屋、東京において合計30回の公演が行われ、延べ15万人以上の観客がショーを観たことになります。

 デビッドファンの中には、何度も会場に足を運んだ人たちも数多くいました。私も、8月10日と16日の2回の東京公演を観に行きました。以下に、私の眼から見たショーの感想を、さまざまなエビソードを交えてレポートします。

■開演前

  今回の会場も、昨年と同じ東京国際フォーラム・ホールA(座席数5012)でした。公演初日(8/10)の東京は連日の猛暑を吹き飛ばすような雨。当日は 待ちきれなくて、開場時刻(18:00)の1時間ほど前に会場に着きました。まだ、客はほとんどいません。しばらく、入り口付近をブラブラしていると、す ぐそばにチケット売り場を見つけました。カウンターに公演のチラシが置いてあったので、手に取って見ると、以前入手したものと内容が更新されていて、チ ケットの前売り情報が記載されていました。係りの女性に当日券の残り数を聞いてみると、まだ150枚ぐらい余裕があるようでした。

 しばらくして、会場外の一角に公演記念グッズの売り場が特設されているのに気がつきました。早速、パンフレット、カード、コースター、携帯スト ラップ、テレフォンカード、マグカップを購入しました。事前に海外のマジシャンの友人から、全ての品物の種類と価格を教えて欲しいと頼まれていましたの で、メモをとりました。アルバイトの女の子2人は、Tシャツの写真撮影に協力してくれました。このグッズ情報は、当日夜、私のホームページで耳より情報と して掲載することにしました。また、熱烈のデビッドファンであるオーストリアの友人にメールで知らせたところ、全てのグッズが欲しいという返事がすぐ返っ てきたので、2度目の鑑賞(8/16)の時に代理購入して送ることになりました。今回の記念グッズは、日本公演用に製作されたものでしたので、彼の眼には 宝物のように映ったようです。また彼からは、12月上旬のオーストリア(ウィーン)公演の時には、是非お返しがしたいと言ってきました。彼との出会いの話 は、別のこぼれ話コーナーで後日紹介したいと思います。

 ところで、この会場外の特設記念グッズ売り場は、開場時刻頃には撤去され、二日目以降は設置されなかったようです。

 開場15分前(17:45)になると、入り口前に6列行列が出来始めました。開場頃には、200人位の列になっていたと思います。

 開場時刻(18:00)になり入場すると、すぐカメラチェックがあり、持参していたデジタルカメラを預けました。会場内に入るのは、昨年に続いて 2度目でしたが、改めて会場の広さを実感しました。幸い、私の座席は1階の13列でしたので、ステージがすぐそばに見える距離でした。時間があったので、 会場内を歩き回り、客席の最後部まで行ってみました。さすがに、ここからはステージの上は、はるか彼方という感じで、肉眼でマジックを見るのは厳しいで す。

 会場の中ほどには、何台ものコンピュータディスプレーと音響制御機器がセットされたブースがあり、スタッフが調整に余念がありません。じっくり、 機器を見学したり、スタッフに話し掛けようかとも思いましたが、忙しそうだったので、いったん席に戻り、パンフレットを読むことにしました。

  パラパラとページをめくっていくと、「デビッド・カッパーフィールドについて語る」というコーナーがあり、日本のファンからの声が紹介されていました。実 は、このページには、私が書いた文章も含まれています。これは、日本テレビのホームページに寄せられた意見の中からパンフレット企画担当者の方が抽出した ものです。6月中旬頃に、掲載許可の依頼がありましたが、喜んで協力したい旨を伝えました。ついでに、私のホームページのことも紹介したところ、担当者の 方にも気に入っていただきお礼のメールを頂戴しました。思わぬところに出会いはあるものです。

 さて、さらにパンフレットを読み進めると、デビッド・カッパーフィールドのツアースタッフが記されているページが出てきました。40人ほどの名前がリストアップされていましたが、その中に知っている名前が二つありました。Magic Consultant: Chris Kenner 氏と Magic Lab Assistant: Cathy Daly さんです。この時点では、まだ2人の顔を知りませんでしたが、事前にメールを交換していた人たちでした。なんとかして、2人に会いたいと思っているうちに開演時刻が近づいてきました。

 開演予定の19:00を5分過ぎた頃、通訳の人が舞台に登場し、"Moon: Interactive Experience"で使用される特製(紙)シートの準備方法が説明されました。そして、月の絵が描かれたカード1枚と白紙7枚を揃えて胸ポケットにしまい、開演を待ちました。

 しばらくすると、一組の老夫婦が体格のよい男性によって案内され、客席最前列の中央に着きました。ショーの最後に、このお二人はデビッドの両親として紹介されます。BGMがスタートすると、いよいよ開演です。

■プログラム 

1. One
2. Thumbs (new)
3. Sofa (Uncle Morty and Aunt Ida) (new)
4. Laser
5. Grandpa / Tides
6. Cocoon 
7. Moonrise (Cardiographic) (new)
8. Dancing Ties
9. Tearable (new)
10. Fan
11. Video show
12. Test Conditions (new)/ Voyeur
13. Panty Swap (new)
14. Moon: Interactive Experience
15. Flying
16. Thirteen (13) (new)


(上演時間:2時間)

■解説および感想

1. One

 この演目は、昨年の東京公演の途中から加えられたイリュージョンですが、私が観るのは初めてでした。

 台の上に板が載せられた状態で、観客2人が台の周りを調べます。4人の男性アシスタントが板を持ち上げ、板の上の白い布がスルスルと空中に持ち上がったかと思うと、突然、布の中からデビッドが出現します。

 シンプルですが、効果的なオープニングでした。

 少し気になったのは、客席の照明が落ちていない状態で、ステージのセットが始まった点です。ここは、予めセットした状 態で緞帳(どんちょう)が上がるか、客席を暗くしてからセットが始まった方が良いように思いました。ただ、このようなスタイルは、マジックショーの固定概 念にとらわれないデビッドにとっては、そぐわないのかも知れません。

2. Thumbs (new)

 デビッドは、観客全員に向けて、両手を前に出し手の甲と甲を付けるように言います。親指が自然に下向きになります。そ のまま、両手を組みます。ステージのジャンボスクリーンには、デビッドの親指が小刻みに動いているのが見えます。次に、手をねじって上に回転させると観客 の両手は逆手になりますが、デビッドの手だけは順手になり、ねじれていません。

 このトリックは、以前、私のサイトでもご紹介しましたが、高木重朗氏が「手品の研究」  (1975年、ごま書房(ゴマブックス))というの本の中で解説しているものでした。私も、これまでパーティーの時など、何度も実演したことがあります。 原理は非常に単純なものですが、巧妙なミスディレクションがポイントになっています。デビッドがどのような演出をするのか興味がありましたが、観客への指 示の仕方に細かな工夫が見られます。「手の甲と甲を付ける」という部分と「親指を小刻みに動かす」という部分です。これによって、観客への指示が明確にな り、また観客の動作は、演者の思い通りに誘導しやすくなります。

 最初は、あまりにも単純なトリックなので、何か意外なオチがあるのではないかと思って見ていましたが、アッサリ終わっ てしまったので、ちょっと拍子抜けしました。しかし、2度目を見た後、ゆっくりと考えてみると、彼の意図が少しづつ判ってきました。今回のショーのテーマ は「U!」(YOU)、つまり観客自身がマジックを体験するということでしたが、その導入部として、このようなリラックスした演目を選択したのではないかと。

3. Sofa (Uncle Morty and Aunt Ida) (new)

 次の演目は、「昔はお金がなかったので綺麗なアシスタントを使うことが出来ず、親戚のおじさん、おばさんに頼んでいま した。」というセリフから始まります。デビッドは、客席に降りて、お手伝いしてもらう観客を2人選びます。適当な人が見つかったら、その人たちに向かって 「モーティーおじさん、アイダおばさん!」と呼びかけます。2人をステージに案内して、大きな赤いソファーに座らせます。デビッドは、2人にピーナッツの 袋を投げ、ちょっとからかうようなジョークを入れます。2人はソファーにベルトでしっかり固定され、しばらくするとソファーが浮き上がり、空中高く昇って いきます。ソファーの直下に、透明なガラス張りの大きな箱が用意されると、今度は、ソファーは下降を始め、箱の中の空間に浮揚した状態になります。箱の蓋 も被せられますが、それでもソファーは空間を上下します。箱の蓋が取り去られると、ソファーは再び空中に浮き上がり、高い位置で止まります。ここで、デ ビッドは手を振りながら、退場してしまいます。空中高く取り残された2人の観客は、唖然とした様子。しばらくして、デビッドは再登場して、ソファーを降ろ し、2人を客席に戻して終わります。

 このマジックは、日本初公開の演目でしたので、興味を持って見ていましたが、正直言って面白くありませんでした。今回のショーの中で、私がカットした方がよいと思った演目は二つありますが、その一つがこの"Sofa"でした。

 最大の問題点は、ショーの後半部に登場する"Flying"との関係です。"Flying"は、デビッドの最高傑作とも言える作品ですが、初めて見る観客にとっては、先にこの"Sofa"の浮揚現象を見てしまうと"Flying"の衝撃は、明らかに弱まるように思います。さらに、"Flying"で使用される透明な箱と同一の道具を持ち出したのは失敗でした。

 デビッドの意図は、観客参加型演目の第2弾として、「2人の観客をステージ上で浮遊させる」という構成にしたのは明らかですが、私には逆効果だったように思えてなりません。

4. Laser

 始めにデビッドは、5年前のヨーロッパ公演で起こった「指切断事件」のエピソードに触れます。これは、ロープ切りのマ ジックの中で、ハサミで指を切り落としてしまった事件のことです。当時、このニュースを伝え聞いた時は、半信半疑でしたが、どうやら本当の話だったようで す。

 女性アシスタントがレーザー光線照射機を持ち出して登場します。客席上方に向かって一直線に緑色のレーザー光線が放射 されます。ステージには、デビッドが階段の付いた台に乗っています。彼は腰に幅広い帯状のベルトを巻いていますが、そこにレーザー光線が当てられると、火 花を散らしてベルトの中央が切れていきます。その後、彼の上半身は左側に回転を始めます。ベルトから下の下半身は、そのまま真っ直ぐに立っているように見 えます。さらに、上半身と下半身が完全に分離した状態になり、上半身がズボンをはいた両足を抱えるような形で階段を降りていきます。再び、上半身は、元の ように下半身の上に重なり、ベルトを外すと、彼は普通の身体に戻って暗転になります。

 この何とも奇妙なマジックを考案したのは、スティーブ・フィアソンという人です。以前、日本のテレビ番組(投稿!特ホウ王国)にもビデオで登場したことがあります。デビッドは、この基本アイデアを基に"Laser"と いう作品を創作しました。この演目は、昨年の東京公演でも演じられましたが、ステージ効果の面でバワーアップした印象を受けました。昨年のように、いきな り胴体が横にずれて回転するのではなく、レーザー光線によって切断された後、現象が始まるように改良されていました。また、レーザー光線が腰のベルトに当 たって、火花を散らしながら横に切れていく部分はタイミングがピッタリ合って実にリアルでした。

5. Grandpa / Tides

  子供の頃、デビッドのよき理解者であった祖父へ感謝を込めて、彼が4枚のエースを使ったカードマジックを演じます。遠くの客席からでもよく見えるように、 彼の手元はビデオカメラで捉えられ、ジャンポスクリーンに大写しにされます。映画"Cousins"(邦題「今ひとたび」)の叙情的な旋律に乗せて演じら れる彼のカードマジックは、何度見ても素晴らしいものです。

 エースが一瞬に普通のカードに変わる部分のテクニックの冴えは、いまだ衰えていません。細かな点では、エースを消した 後の3枚のカードの置き方が以前と微妙に変わっています。以前は、3枚のカードをそのままテーブルに置いていましたが、今回はテーブルに置いた2枚のカー ドをすくうように3枚目のカードを置いていました。ミスの可能性を少しでも減らすためなのかも知れません。

 なお、この演目は、一部の公演では、"Tides"(潮)に差し替えられました。

6. Cocoon 

 デビッドは、台の上の白い幕の前に貼り付けられ、女性アシスタントに両腕を縛りつけられます。白い幕は筒状に閉じられますが、この時の形状がタイトル"Cocoon"(ま ゆ)の由来になっています。「まゆ」は空中に吊り上げられ、高い位置で静止します。次に、台の上にアシスタントが立ち、身体を白い布で覆ったかと思うと、 女性は瞬間的にデビッドに変わっています。空中の「まゆ」を再び下に降ろすと、中から先ほどの女性が縛られた状態で出現します。

 この演目は、TVスペシャル"Fires of Passion"(MDC15-93)に登場以来、人気の高い作品で、昨年の東京公演でも演じられました。デビッドと美女とのセクシーなダンスシーンと幻想的な照明効果が印象的です。日本のTV番組でも、そのハイライトシーンが繰り返し放映されています。

 注意深く見ると、TVスペシャルとツアーでの内容は、いくつかの点が異なっています。一つは、女性の衣装が白からレ ディッシュブラウンに変わっている点、もう一つは、変身後の女性の出現の仕方です。TVスペシャルでは、デビッドが出現した直後に、空中で「まゆ」が開い て女性が出現していました。上の写真は、今年、日本で放映された番組での映像の一コマです。

 私は衣装の色も現象もTVスペシャルの方が断然好きですが、衣装の色はともかく現象の方はツアー公演では止むを得ない 変更なのかも知れません。2度目に観に行った時、一つ気がついたのは、まゆの中に入ったデビッドが空中に昇っていく時、隙間から手が出てまだ彼がまゆの中 にいることを表現していたことです。手が中に引っ込んでから、下の台の上に彼が出現するタイミングは非常に短い時間のような印象でした。細かなところで、 彼は工夫を絶えず付け加えています。

 ちなみに、今回の女性アシスタントは、日によって人が変わっていたのに気づきました。

7. Moonrise (Cardiographic) (new)

 デビッドは客席に降りて、一人の女性にお手伝いを頼みます。彼は女性に月の絵が描かれた大きなカードを見せます。満 月、三日月、マイアミの月、ブルームーン、ニッコリマーク、女性のヒップ(笑)。裏向きにした状態で、一枚のカードを選ばせます。彼はスケッチブックを取 り出し、女性と背中合わせになります。彼は女性に女性に向かって、「ももに手を当てて、、、背中を押して、、、」と話し掛けながらスケッチブックに絵を描 いていきます。彼が描いたのは、海と満月の絵。しかし、女性が選んだのは三日月。彼はがっかりしつつも、「三日月のことを英語ではフルムーン(満月)と言 うんです」とジョークを飛ばします。少し考えた後、「実は僕の絵は太陽なんです。見てて! 太陽は沈み、三日月は昇る。」と言うと、スケッチブックの絵の 太陽も本当に沈んでいき、三日月が昇っていきます。最後にスケッチを破って、女性にお土産として渡して終わります。

 このマジックは、TVスペシャル"Niagara Falls Challenge"(MDC12-90)の中の"Cardiographic"という作品の新しいバージョンです。原案は、マーチン・ルイス氏の"CardiographicSketch Pad Card Rise"です。このマジックを私が初めて見たのは、1990年の日本公演の時でした。以前の現象は、選ばれたトランプカードが絵の中からせり上がってくるというものでした。最近では、売りネタとしても販売されていますが、私は持っていないので未だにタネを知りません。これは傑作マジックの一つであることは間違いありません。

 さて、今回のデビッドのバリエーションの演出ですが、私の好みでは以前 の演出の方がスッキリしていて好きです。また、「お尻をピッタリ付けて、、、」という部分も以前はお洒落な印象でしたが、今回は、クリントンとモニカの話 などが出てきて、ちょっと品が落ちてしまったのが残念でした。

8. Dancing Ties

  デビッドは、再び客席に降り、一人の背広姿の男性を選びステージに案内します。男性からネクタイを借り、 透明な四角の箱の中に投げ込みます。箱の回りをよくあらためた後、客にも透明な蓋をよくあらためてもらいます。デビッドが箱を叩くと客も同じように叩きま す(笑)。何度か繰返した後、デビッドが複雑な叩き方をすると、客はちょっと考えた後、「タン・タカ・ターン・タン・タン」と応じます(爆笑)。ここで、 男性は客席に戻されます。

 デ ビッドが、ネクタイを床にたらすと、ネクタイはピーンと伸び、手を離しても倒れません。ネクタイを壷に入れ、おまじないをかけると、ネクタイは蛇のように 立ち上がってきます。ネクタイの端が折れて口をパクパクさせると、デビッドはミルクの入ったグラスを与えます。ストローを通して、ミルクを飲んでいる様 子。グラスのミルクが減っていきます。そのうち、Harry Belafonteの"Angelina"の曲がかかると、ネクタイは踊りだします。

 さらに、横の箱から3本のネクタイが立ち上がり、ネクタイたちは、みんなで楽しそうにダンスショー。

 このマジックは、TVスペシャル"Explosive Encounter"(MDC11-89)の中でも演じられた"Dancing Ties"です。日本でも、翌年1990年の日本公演に登場しました。初期のTVスペシャル"Dancing Handkerchief" (MDC1-78)のバリエーションと言ってもよいでしょう。柔らかなハンカチーフの動きに対して、このネクタイの動きにはユーモラスな印象があります。陽気な"Angelina"の曲ともマッチして、実に楽しい雰囲気を作り出していました。一般客、特に子供たちにとっては、大喜びするマジックです。

 マジックの点から見ると、3本のネクタイが立ち上ってダンスをする場面が出てくると、ちょっとネタが想像されてしまうような気がしてしまいます。しかし、デビッドは、トータルな演出効果の方を重視して、このような構成を考えたのではないかと思います。

 最後に、「ネクタイとバイアグラは一緒にしないで別々に保管しましょう。」という蛇足とも言えるセリフが出てきました。アメリカでは受けるジョークだと言っていましたが、日本ではあまり受けないと思います。

9. Tearable (new)

 この演目も日本初公開のものでしたが、私が気に入ったマジックの一つです。

 まず、4X4のマスに仕切られた正方形の 紙が示されます。それぞれのマスには、手のひら、足の裏、ハート、目などのシンボルがランダムに描かれています。ここで、何人かの観客が選ばれ、ステージ の前、通路、客席の中央通路付近に集められます。それぞれのグループにはアシスタントが付き、正方形の紙が渡されます。ここで、デビッドは、選ばれた観客 に好きな線のところで紙を折るように指示します。さらに、どんどん折り畳んでいくと最後に一マスの四角の形になります。客によって、折り方は異なるので、 そのパターンはさまざまな順序になるように思えます。四隅を破ってもらった後、デビッドは、その紙の束を観客の両手の中に握らせます。

 次に、一人の客が、いろいろなシンボルが描かれたカードの中から一枚を選びます。見ると「手のひら」のシンボルです。 デビッドは、一人の客の両手から紙の束を取り出し、テーブルに1枚づつ置いていくと、16枚全てが「手のひら」のシンボルに変わっています。2人目の客に も同じようにやると、これも全て「手のひら」のシンボルが出てきます。3人目の紙も全て「手のひら」のシンボルに変わり、テーブルの上は、「手のひら」の シンボルで埋め尽くされます。ステージのスクリーンには、他のグループの様子も次々に映し出されますが、全て「手のひら」になっています。

 このマジックを初めて見たとき、一瞬、奇蹟が起こったような感覚になりました。その後、あの紙は、何かの化学作用で印 刷が変化するものなのだろうかと本気で思いました。あるいは、紙の裏は、全て同じシンボルが描かれているのではないかと考えました。しかし、2回目を観に 行ったとき、これらの推測は、全く見当違いであることが分かりました。ますます、不思議な気持ちになりました。

 ショーが終わった後、何度も見ている友人が一つのヒントを教えてくれました。これを聞いて、デビッドの巧妙な演出の素晴らしさに改めて感動しました。まさに騙される快感というのでしょうか。

 さらに、数日後、マジェイアさんのホームページで、このトリックの原案は、イギリスのパズル研究家、ヘンリー・ドゥドニー(Henry Dudeney) 氏であることを知りました。マーチン・ガードナー氏が「パラドックス・ペーパー」として、1971年7月に解説しています。(「マーチン・ガードナー・マジックの全て」187〜188ページ、東京堂出版1999年)

 また、マックス・メイビン(Max Maven)氏が"Doc Easons bar magic videos"の中でも解説しているようです。

 古いトリックでも、演出次第で新しい作品がこのように産み出せるんだなぁ、と改めて感じました。

10. Fan

  ステージ上には巨大なファン(扇風機)がゆっくり回っています。煙が湧き上がるとファンに吸い込まれていきます。デビッドがファンの前に立つとスクリーン が降ろされ密室状態になります。中からライトが照らされると中のデビッドがシルエットに浮かびます。彼はファンに向けて手を入れていくと煙となって徐々に 身体が消えていくのが分かります。完全に消えてしまうと同時に火花が散って、スクリーンが倒されますが、デビッドはどこにもいません。と思った瞬間、彼は 客席から登場し、アシスタントの美女が待つステージに駆け上がっていきます。彼女のスカーフは、ファンの風に乗って客席に吹き飛ばされていきます。

 このマジックは、TVスペシャル"Unexplained Forces"(MDC17-95)"The Fan"というイリュージョンです。昨年の東京公演 "Dreams & Nightmares" でも演じられました。TVスペシャルの方では、彼と共に美女もファンを通り抜けて消え、二人揃って客席から登場していました。煙と光と風を効果的に使った幻想的な作品です。

11. ビデオ上映

 TVスペシャル"Fifteen Years of Magic"(MDC16-94)の中で挿入された過去の作品のハイライトシーンが上映されました。含まれていたイリュージョンは、下記のものです。

Vanish Motorcycle(MDC13-91)
・Elevator(MDC14-92)
・On The Edge(MDC9-87)
・Squeeze Box(MDC14-92)
・Motorcycle Illusion(MDC11-89)
・Niagara Falls Challenge(MDC12-90)
・Blueprint for Mystery(MDC15-93)
・Bermuda Triangle(MDC10-88)
・Escape from Death(MDC6-84)
・Head Mover(MDC13-91)
・Pole Levitation(MDC11-89)
・The Attic Illusion(MDC12-90)
・Train Car Vanish(MDC13-91)
・Statue of Liberty Disappears(MDC5-83)
・Motorcycle Illusion(MDC11-89)

12. Test Conditions (new)/ Voyeur

 デビッドは客席に向けてフリスビーを投げます。受け取っ た観客は、さらに別の方向に投げ、3度目に受け取った観客が選ばれ、ステージに上がります。観客は白衣を着せられた後、キャビネット(箱)を調べるように 指示されます。次に、TVモニターが運ばれてきます。スイッチが入れられると画面にはデビッドが映っています。モニターの中のデビッドと本物のデビッドが 会話をします。ここで、デビッドは客席の方に退場し、その後はモニターの中のデビッドが観客に指示を与えます。

 白衣姿の観客は、箱の回りを調べたり、床に仰向けになって箱の底に潜り込んだりして、十分に箱を調べます。2人の女性アシスタントが作業を手伝います。箱の側面が四方に開かれ、中には何もないことが示されます。再び、箱が組み立てられ、さらにライトを持った4人の男性アシスタントが登場します。箱の回りをぐるりとあらためると、箱の中からデビッドが忽然と登場します。

 この演目は、今年の5月から"U!"ツアーに加えられた最新作です。原案は、Gary Ouellet 氏の"The Millenium Cabinet"です。1999年4月7日付けで、デビッドはこのマジックに関する全ての権利を買い取った模様です。また、BGMには、Ricky Martin"Livin' La Vida Loca"が使用されたのも大きな話題を呼びました。"Livin' La Vida Loca"は、 世界15カ国のヒットチャートで第一位を獲得した大ヒット曲です。日本語に直訳すると「クレージーな生き方」という意味ですが、一度聞いたら忘れられない ほど魅力的な曲です。2度目に公演を観に行ったとき、近くのCDショップに寄ってCDを購入しました。その店の売上げベスト10でもトップになっていまし た。ただし、東京公演の途中から、BGMは別の曲に変えられました。理由は解りませんが、この曲があまりにもヒットしすぎて、曲のイメージが強すぎるよう になったためかも知れません。

 さて、原案との違いですが、主に次の点をデビッドは変えています。

(1)最後の出現が女性ではなく、デビッド自身である。

(2)TVモニターの中の映像から観客への指示を行う。

 原案"The Millenium Cabinet"の現象については、"U!"ツアーでの実演が始まる前までは、Gary Ouellet 氏のホームページで公開されていましたが、今では情報が削除されています。

 この"Test Conditions"の イリュージョンを初めて観たときは、アッサリした感じで、いまひとつ感激が薄かったのですが、2度目を観た後で、じわじわと不思議感が増してきました。非 常にシンプルだけに、怪しいところが見当たりません。一箇所だけ、気になるところがあるのですが、どう考えてもトリックの謎は深まるばかりです。

 ところで、この演目は、一部の公演では、"Voyeur"(覗き魔)に差し替えられました。

13. Panty Swap (new)

 この演目が、私がカットした方が良いと思った二つ目のものです。マジックの内容とその演出は、これまでのデビッドのイメージからは考えられないようなものであり、ちょっとショックでした。

 デビッドは客席に向かって、次のように話し掛けます。「今白いパンティ をはいている人、手を上げて下さい」戸惑いつつも、多くの観客が手を上げます。「では色つきのパンティをはいている人、手を上げてください」少数の観客が 手を上げます。「それでは、両方とも手を上げなかった人は?」(笑)

 デビッドは客席に降りて、二人の女性を選んでステージに上げます。パン ティの色を聞いた後、名札に名前を書いてもらいパンティに貼り付けます。パンティの色は「白」と「赤」でした。二人の女性を椅子の上に立たせます。二人の パンティを入れ替えて、再び元に戻すという古いギャグを入れた後、デビッドは布を取り出し、白いパンティの女性の腰のところに覆うと、パンティが抜き取ら れ、布の上に浮かんだ状態になります。そのまま、赤いパンティの女性の前まで移動し、腰のところで布を覆うと赤いパンティに変わっています。再び、元の女 性のところまで戻り、同様にパンティを交換する動作を行います。

 本当にパンティの色が変わったことを確認するため、ビデオカメラが女性の下着を映すと、確かに色が変わっており、名札も自分の名前になっています。

 さらに、追い討ちをかけるように、デビッドは、「それでは会場の皆さんのパンツも消しましょう!はいっ!・・・本当かどうか隣の方のパンツを確かめてみて下さい。クリントン大統領もやっているんです。これでみんなも大統領!(笑)」

 とにかく、この演出は、私にとって眼をそむけたくなるようなものでし た。この種の下ネタを主体とするマジックは、日本では品の無い宴会芸として定着しており、まさかデビッドが演じるとは夢にも思いませんでした。アメリカで は、軽妙なジョークが生き、もう少し違った印象なのかも知れませんが、少なくとも日本においては、完全にイメージダウンするような演目でした。

 また、マジックの面でも、同様なギミックを使っているゾンビボールやダンシングハンカチーフに比べると、改悪の印象は否めません。

14. Moon: Interactive Experience

 次の演目"Moon: Interactive Experience" (インタラクティブな体験)は、昨年の日本公演でも大好評だった作品です。5000人の観客全員がマジックを体験するという意味では、今回のテーマ"U!"に最も相応しいものでした。今年は、さらにパワーアップした印象を受けました。

 デビッドは、開演前に準備した7枚のブランクカードと1枚の月のカードの一組を取り出すように客席全員に話し掛けます。
月のカードを7枚のブランクカードの中の任意の位置に入れます。さらにデビッドの指示通りにカードを動かすと、最後に全員の月のカードが同じ所から出現します。

 このマジックの優れているのは、セルフワーキングトリッ クでありながら、その匂いが見事に払拭されている点です。それぞれの観客の操作は、ランダムのように見え、カードの配列はごちゃ混ぜのような気になりま す。そこで、「最後に月のカードが出たら立ち上がってください。」というところで、回りの観客が次々に立ち上がり、自分のカードを見ると「月」になってい るところで、感動は最高潮に達します。この体験は、多くの観客の中に強烈な印象を与えることになります。まさに観客の数の多さを最大限に利用したマジック の傑作と言えるでしょう。

 このトリックは、マジック経験の長い愛好家でも煙にまか れるほど、良く出来ています。私も、昨年の東京公演を観た後、家に帰って、カードの操作を何度も繰返しましたが、どうしても思い出せませんでした。その 後、YMGの人から手順を教わり、自分でも判った気分になっていました。

 しかし、今年の東京公演を観てみると、さらに手順が改良されているのに気が付きました。また、観客代表の人が持っている月のカードを当てる部分も新しい工夫が加えられています。

 観客から見た現象は、次のようなものでした。

ステージ上の観客に向かって、デビッドは「あなたのお尻の下の8枚のカードを出してください。」と言います。
「8枚のカードを扇状に開いてください。私は、どこに月のカードがあるか当ててみましょう。」
「その前に、私はあなたの月のカードを見てしまっているといけませんから、よく混ぜてください。」
客の持っている8枚のカードを指しながら、裏向きの1枚のカードを何気なく抜き取ると、それが月のカードになっています。

次に、デビッドは、もう一人の観客に対して、「あなたのお尻の下の8枚のカードを持って、こちらにお出でください。」と言います。
「そのカードをお借りします。今度は、あなた自身に当てていただきます。」
「これだと思う裏向きカードの上に指差してください。」
デビッドが、そのカードを表向きにすると月のカードです。

 この二人目の観客の部分は、昨年の公演にはなかったよう に思います。ステージのスクリーン上で、このようなやりとりを見た観客は、自分のカードの中に、月のカードがどこにあるのか、ますます分からなくなりま す。また、客席の観客への指示で巧みなのは、「手元を見ないで、指先で感じてください。」というセリフです。これによって、「私が皆さんの月のカードを当 てます。そーっとそのカードを見てください。それが月のカードです。」と言われて、本当に「月」が出た瞬間の効果を劇的に高めています。

15. Flying

 いよいよ、ショーも大詰めに近づき、"Flying" の登場です。この演目は、TVスペシャル"Flying: Live The Dream"(MDC14-92)で初めて演じられ ましたが、当時大反響を呼びました。残念ながら、この番組は日本では未だに放映されていませんが、そのハイライトシーンだけは繰り返し流されています。日 本でも、その年(1992年)夏の第2回日本公演の目玉でした。とにかく、初めて観たときは本当に驚きました。ステージ上は、まさに夢の世界のように思え ました。当時のライブステージでは、演技前にギリシャ神話のイカルス(Icarus)の絵が描かれた巨大な(後ろが透けて見える)幕がセットされていたのが印象的でした。TVスペシャルでは、イカルスという名前の隼(falcon)を左手に止まらせて、飛び去っていくラストシーンが有名です。さらに、雲をイメージしたオブジェとブルーの照明が舞台効果を高めていました。

 さて、カッパーフィールドの代表作とも言われるこの"Flying"で すが、初めて観る観客にとっては、相変わらず感動するイリュージョンであることは間違いありません。しかし、私のように初期の頃から何度も観ている観客に とっては、少しづつ感動が薄れてきたというのが正直な感想です。以前のように、軽やかに美しく空中を飛ぶというイメージが弱くなりつつあります。デビッド も40代になり、そろそろピッタリ身体にフィットしたジーンズ姿が似合わない年齢になっています。今回は、彼の少しダブダブ気味のジーンズ姿を見て、その ことを実感してしまいました。これは、私の個人的意見ですが、ワールドツアーの演目の中で、そろそろ"Flying"を封印すべき時期が近づいているように思います。

16. Thirteen (13) (new)

 最後の演目は、今回のショーの目玉の"13"でした。このイリュージョンは、昨年の東京公演の次のツアー先だった香港で初めて公開されました。13人の観客がステージ上で消え、戻ってこないと聞いた時、一体どんな風に消えるんだろうと、興味津々でした。そして、今回ついに日本でも実演されたわけです。

 まず始めに、デビッドは、「18歳以上で健康な人は立ってください。」と言います。次に、デビッドは客席に向かって15個の銀色のボールを投げ込みます。ビー チボールのような軽いボールで、観客はそのボールを後ろにパスしなければなりません。音楽がスタートします。ボールを止めてしまったり、夫婦の間でキャッ チボールをし合ってはいけません(笑)。音楽が鳴り止んだ時、ボールを捕まえた人がステージに上がれる権利を得られます。東京公演初日(8/10)では、 2階席最前列の人は危険防止のため、ボールを取らないように注意されました。8 月16日の公演では、この範囲はさらに拡大され、5列目までの人はボールを取ることは出来ませんでした。音楽がストップすると、幸運にもボールを捕まえた 人はステージに来るように言われます。デビッドは、一人づつボールを受け取っていきます。15人のうち2人が監視役として選ばれます。この2人の選び方 は、アメリカでの公演の場合、デビッドが簡単な質問をし、その答え方によって選んでいました。しかし、日本での場合には、外見を見て「真面目そうな?」2 人が選ばれました。

  ステージのケージの上には、後列7脚、前列6脚の計13脚の椅子が並べられています。13人の観客が、それぞれ椅子に座ります。監視役の2人は、ケージの 両脇の椅子に座って、その後の出来事を見張ることになります。ここで、デビッドは13人の観客に対して、客席の家族や友達にお別れの挨拶をするように促し ます(笑)。次に、デビッドは銀色のバケツから2本のフラッシュライトを取り出し、前列中央の観客2人に渡します。そして、隣の客に順番にライトを手渡すように言います。

 ケージ全体に白い布が被せられます。残り11本のライトがアシスタント からケージの中の観客に手渡されます。ケージ全体が空中に持ち上げられます。デビッドは、「一人1本ライトを持って、くるくる回してください。」と言いま す。布を通して、ライトの点が蛍のように動いているのが見えます。

 しばし沈黙の後、雷が鳴り響きます。火花が散ったかと思うと布が床に落ちます。そして、ケージの中には、誰もいません。一瞬、眼を疑うようなシーンです。たった今まで、確かにそこには13人の観客がいたはずなのに椅子だけが残されています。

 ほどなく、デビッドはお辞儀をして退場してしまいます。スタッフが後片付けを始め、客席の照明が明るくなります。客席の観客は、戸惑い気味にざわつき始めます。

 しばらくして、ステージ下手(左側)からデビッドが再登場して言います。

「みんな、まだ帰らないのかい。ショーは終わったんだよ。13人は消えてしまいました。私は消し方は考えたけど、まだ出し方を考えていないんだ(笑)。どうしても会いたかったら、私のスタッフが消えた人の居場所を教えます。でも2〜3ヶ月先になると思うけどね(笑)。」

 そして、最後にデビッドは次のようなメッセージを観客に伝えます。

「このマジックは、私の幼い頃の体験をもとにして作ったものです。ある日 家に戻ると両親がいなかったのです。とても不安になり、あちこちに電話をかけて無事を確かめたものです。それからは、両親と過ごす時間を大切にするように なりました。全ての人にとって、命あるものは、かけがえの無い大切なものです。今日は、私の両親がショーを観にきてくれています。最前列にいるのが私の両 親です。」

 ここで、両親(Hy and Rebecca Kotkin夫妻)が立ち上がりお辞儀をします。スタッフに付き添われて両親は退場していきます。

ほとんどの観客が、スタンディングオーベイションで応えます。

 さて、このイリュージョンの原案者は、"Test Conditions"と同じく、Gary Ouellet 氏です。初期の頃は、"The Verdict"(陪審員)と呼ばれ、12人の観客の消失だったと言われています。
Gary Ouellet
氏は、これまでもデビッドのイリュージョンには多大な貢献をしています。
"Flying"、"Cocoon (Metamorphosis)"、"Snow"
などにも Gary Ouellet 氏のアイデアが取り入れられているようです。

■ショーを見終わって

 終演後(8/16)、Cathy Daly さんと Chris Kenner 氏、そして、David 本人に会うことが出来ました。この話は、別のこぼれ話コーナーに書きます。

 最後に、全体を通した感想をまとめます。

1.観客参加型イリュージョン"U!"のテーマ

 今回のショーのテーマは、観客参加(インタラクティブ)でした。15の演目(ビデオ上映を除く)のうち、10の演目が観客の参加を伴うことからも、デビッドの意図がよく表れています。

 カッパーフィールドのマジックの系譜を振り返ると、次のような流れでした。

Psycho Shower Scene、Dancing Handkerchief(MDC1-78)
Floating Mirror Ball、The Jewel Thief、The 50's,The Detective(MDC2-79)
The Fable(寓話)(MDC3-80)
Clubhouse,Love Isnt Just for the Young (Age)(MDC4-81)
Story of Magician and Evelyn who raised children
(MDC5-83)
Father and Son(MDC7-85)

Escape from Alcatraz(MDC9-87)
Bermuda Triangle(MDC10-88)
Building Escape(MDC11-89)
Niagara Falls Challenge(MDC12-90)
Amazon Ritual(MDC15-93)

"Dreams and Nightmares" (1996-1998)

 雑誌(ぴあ関西版)のインタビューの中で、デビッドは、次のように話しています。

「今までのショーは、自分に軸を置いたものばかりだったんだけど、今度は観客に軸を置いてみようと思ったんだ。」

 このきっかけとなったのは、前回の"Dreams and Nightmares" 公演における"Moon: Interactive Experience"だったのではないかと私は思っています。この時の観客の反応は、予想を越えるほどの大きなものでした。今回は、この演目をさらにパワーアップさせると共に、多くの観客参加型イリュージョンが新たに付け加えられました。

 私自身の感想では、一部の演目の選択に不満はあるものの、全体の構成としては、十分満足できるものでした。

 また、多くの愛好家の人たちが気にされていた「演出としてのサクラ」の件については、私はこう思います。

・初めての観客にとっては、全く気が付かない。
・2度目の観客には、一部「あれ?同じ人かな?」という感じを持つ。
・3度目以降の観客には、明らかに、「決まった人が選ばれている」と気が付く。

 私も東京公演初日(8/10)を見た時は、ちょっと「サクラ」の存在が目立つという印象を持ちました。しかし、今では、デビッドの考え方を理解できるよ うになりました。多くのマジックは、「観客がその演目を始めて見た場合」が最大の効果を有するので、2回目以降の観客は、少し演出効果が薄れるのは止むを 得ないのではないでしょうか。
 また、彼は、何度も見にきてくれる観客に対して、少しでも楽しみを増やすように演目を入れ替えたり、セリフを少し変えたり、アドリブを入れたりといった工夫が見られます。

 例えば、「Frying」の「さちよさん」に関して言えば、「不二子」、「しずか」、「花子」、「聖子」、 「みちこ」というバリエーションがあり、それぞれにジョークネタが考えられています。
(FMAGICのザッツさんからの情報です。)

2.デビッドの演技

 今回が、4度目の日本公演になりますが、彼はすっかり日本の観客にも慣れ、とてもリラックスして、自分でも楽しんでいるように思えました。客席にも、どんどん降りてきたので、彼の存在が、より一層身近に感じられました。

 昨年も感じた、彼の日本語のセリフの多さの違和感は、今年も同様でした。特に、"Cocoon"での「状況の変化、情熱的な愛、男性と女性の間」という部分の日本語のセリフのギャグは、私には蛇足に思えます。この演目では、いきなり演技に入った方がずっと効果的でしょう。

 また、個々の演目の感想にも書いたように、今回のショーではたびたび下ネタのジョークが出てきたのは、残念でした。

3.新イリュージョン"13"

  最後の演目"13"において、「観客が消えたまま終わってしまう」と いうエンディングは、前代未聞のことでした。推理小説に例えるなら、真犯人の正体が明かされずに終わってしまったような感じです。これには、賛否両論があ るのは明らかでしょう。多くの観客はハッピーエンドを好みます。特にマジックショーにおいては、最後は華やかに、あるいは爽やかに出現して終わるのが似 合っています。デビッド自身も、公演パンフレットの中で、「今回(ラスベガス公演)は、消しっぱなしだったけど、再度登場させたり、実はいろいろパターンを試しているんだ」と漏らしています。

 私はと言えば、彼の試みを支持します。ライブショーとい うのは、非日常性を演出する空間だと思っています。一流のパフォーマーというのは、観客に媚びることなく、あらゆる工夫を凝らして自分のメッセージを観客 に伝えようとする人です。エンディングで、彼が両親を紹介した時、私はこの演目に込められた彼のメッセージを深く受け止めたように思えました。

 最後に、私が勝手に選んだ、もう一つの"U!"の演目リストを付けて、今回のレポートを終えます。次回の日本公演は、再来年の2001年になると言われています。再びデビッドに会える日を楽しみに待っています。

1999年9月18日 スティング

スティングが勝手に選ぶ もう一つの"U!"

1. One
2. Thumbs
3. Laser
4. Grandpa
5. Cocoon 
6. Moonrise (Cardiographic)
7. Dancing Ties
8. Tearable
9. Fan
10. Test Conditions
11. Moon: Interactive Experience
12. Flying
13. Thirteen (13)


付録:


関連サイト

The Official David Copperfield Website (http://www.dcopperfield.com/)

 デビッド・カッパーフィールドの公式ホームページ

 公演パンフレットの中でも紹介されました。一般客の中では、彼のホームページの存在を初めて知った人たちも多かったようです。

 



■ 読売テレビ(神戸公演)ページ (リンク切れ)
   (http://www.ytv.co.jp/evnt/copper.htm)

■ 中京テレビ放送(名古屋公演)ページ  (リンク切れ)
   (http://www.cdc.toppan.co.jp/CTV/event/copper.htm)

NTTDoCoMo東海 PRESENTS の名古屋公演ポスターを見ることが出来ます。

 




■ 日本テレビ(東京公演)ページ  (リンク切れ)
    (http://www.ntv.co.jp/event/copper99.html)

 特製マウスパッドが当たるクイズ企画、特別番組情報、公演情報など昨年より力を入れた構成でした。

 

 

8月15日(日)付日刊スポーツのインタビュー  

  日刊スポーツの日曜日のヒーロー第176回(8月15日)は、タイムリーなカッパーフィールド特集。「Yes」が僕の生き方という大見出しとともに興味津 々のインタビュー記事が掲載されました。東京公演終了後、クローディア・シファーとスペインのマジョルカ島で合流してバカンスを楽しむというスクープも飛 び出しました。

 

■ 「新・俺たちの旅Ver.1999」(8/14)収録エピソード  (リンク切れ)
   (http://www.ytv.co.jp/topic/ore0624.htm)

日本テレビ系のドラマ「新・俺たちの旅」にデビッドが特別出演しました。彼の役どころは、部屋を探している在日アメリカ人。

 大家さんに気に入られて、無事、部屋を確保します。彼の部屋にお茶を差し入れに行った大家さんが見たものは・・・

 デビッドファンには、ニヤリとするようなラストシーンが好評でした。


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Update: 1999/9/18