コンテストに引き続いて行われた。実際にはこの間に審査結果の集計があり、ショー終了後に審査結果の発表と授賞式があった。
白い鳥の小さな羽をもって登場。瞬時にその羽が大きな羽に変化する。さらにその羽が白いシルクに変わる。白いシルクは黒に変化し、さらに黒いB4版大の紙になってしまう。黒い紙でコーンをつくる。コーンの中から白いボールが現れ、また消えてしまう。ボールは再び現れる。ボールを床に弾ませて、また消してしまう。ボールの消失・出現現象が繰り返される。何かの拍子にボールが消え、コーンを開くと黒い紙の真ん中に白い丸が描かれており、まるで白いボールが紙にとけ込んでしまったかのような印象を与える。 紙の白丸が消え、白い円盤が現れる。(ボールが扁平になってしまた。)この円盤が消えたり、演者の衣装(黒いトレーナーのように胸の部分はスッキリしている。)に張り付いたりする。胸に張り付いた円盤は瞬時に四角いカードに変化する。カードを手に取り、消してしまい、両手をあらためる。現れたカードは一瞬にしてもとの白いボールに変化する。
ボールが30cmくらいの紙テープに変化する。この紙テープをちぎるが、一瞬にして復活する。この紙テープが消えてなくなり、また現れる。紙テープはボールに変化しさらに白いシルクになってしまう。
先ほど使用した黒い紙(自然にウオンド状にまるまる。)を巻いた状態で自分の顔をひとなですると、いつの間にか演者はサングラスをかけている。シルクをウオンド(バニッシャーウオンド)でたたくと一瞬にしてシルクは消失し、ウオンドは黒かったのが白くなってしまう。ウオンドをなでると元通り黒くなり、なでた手には白いボールが現れている。ボールを先ほどの筒状になった黒い紙に入れると、下から煙の入ったシャボン玉が出現する。
昨年のSAMジャパン浜松大会の演技と比較すると格段に安定感が出たように感じた。それぞれのハンドリングは大変美しく、相当練習したことが伺える。小さい品物の出現消失や変化現象が中心であるが、途中だれてしまわないように、様々な工夫も凝らされている。サングラスの演技などは、よく考えれば演者は初めからサングラスを頭のところにかけていたのだから、どうということはないのだけれど、息をつく暇もない演技が盛り上がってきたところで見せるので大変効果的であり楽しい。ただ、マジックをするものがみれば色々おもしろいと思う点があり、勉強にもなるけれど、一般のお客さんが見てどれくらい感激するかということになると、別問題だろう。現象もよくわかるのだけれど、インパクトにかけるのではないか?たとえば、最後に煙の充満した(従って白い)シャボン玉が出現し、それが文字通り煙となって消えていく、といった最高の見せ場も、一般のお客さんにはどれだけ感動が伝わるかと問えば、心許ない気がする。今後、一般のお客さんにもどんどんマジックを見て頂くということになるのであれば、一般の方用のルーティンは練り直しをしなければならないと思われる。
トランクをもって登場。あやつり人形のような動き。パントマイムでトランクが勝手に動き回る様子を表現。演者はトランクに振り回される。トランクが宙に浮き、演者を持ち上げようとするところなどは拍手がきた。トランクを上手のスタンドにかけて、銃で撃つ。ぱん!と音がすると、下手にあった看板のようなものが折れてしまう。再度銃を撃つとこんどは、自分のズボンが落ちてしまう。トランクに近寄って見ると、「ショウタイム」と書かれた垂れ幕がトランクからはらりと垂れる。
手袋をはずそうとするが、左手の手袋がどうしてもとれない。無理に引っ張ると、手袋には袖がついており、シャツがずるずると袖から手袋に続いて出てくる。さらにパンツまでつながって出てくるので会場は笑いの渦につつまれる。これに引き続き詳細不明だがゴム鳩が出現する。鳩を飛ばそうと、軽く放るが鳩はぼとんと床に落ちる。ちりとりハサミでこの鳩をつまんで片づける。
シルクハットと白いシルクを持つ。すると口から白い玉が続けて2つ出てくる。さらに手や口から次々に白い玉が現れる。4つ玉の演技。途中玉を飲み込んでそれが、ズボンの裾からでるというような演技も入る。突然カードが1枚現れる。これに続けて口の中からたくさんのカードがどっと現れる。さらに口の中から大きなスポンジボールが現れる。スポンジボールが浮いているようにパントマイムで表現する。空中のある1点に静止しているかのような演技も行う。
シルクハットと白いシルクを取り上げる。シルクハットから、ウサギがぽろんと落ちるが、演者は気づかない。正面を向いたところで、ウサギがいないことに気づき、床に落ちているウサギをパッと拾う。ウサギに催眠術をかける。ウサギはパタンと倒れてしまう。このウサギをテーブルに置く。2001年宇宙の旅のテーマ音楽が流れはじめる。大きな音に合わせてウサギの足を動かしてみせ、笑わせる。ウサギにスカーフをかけ、パントマイムでウサギが浮いたように見せる。その後、スカーフをさっと取り除くとウサギは消失している。自分の頭(シルクハットをかぶっている)に向かって銃を撃つと、シルクハットのてっぺんが蓋のようにぱかっと開いて、中からウサギが飛び出す。さらにもう一度銃を撃つと、「ショウタイム」の垂れ幕が外れ、トランクが壊れて、「THE END」という看板が現れる。
パントマイムマジックという独自の路線を研究されるプロマジシャン。全体によくまとまっていて、一般のお客さんにはとてもうけるのだろうと思われた。パントマイムが違和感なくマジックショーに組み込まれており、構成がよかった。道具類も周到に計算されて準備されているという印象。さすがプロといったところ。ただ、鳩をちりとりハサミでつまんだり、口から色々なものを取り出したり、下品な部分が非常に気になった。銃を繰り返し使うのもあまり感じがよくない。ブッラク嶋田さんを彷彿とさせるようなところもあった。今後のご活躍が期待される。
日本髪に着物といった出で立ち。お祝いペーパー。紙をあらためて折り畳むと中からファンファンや4連の鶴が現れる。紙を裏にすると「祝」の文字が書かれている。その後突然7色の大きなファンファンが2つ現れる。
紐に赤い毛花(花の部分だけ)が3つ、白い毛花(花の部分だけ)が3つ、一定の間隔でつながってついている。毛花は手で握れば隠れてしまう程度の大きさ。花のついた紐を手でひとなですると、花の順番がかわる。(紅白交互に花が並ぶ。)木の葉カード。その後詳細不明だが大きな鈴を用いてマジックをしたかもしれない。
紅白の編み込んだロープを取り上げる。8の字結びなどの結びどけ2種。3つの結び目が一瞬に出来る。あと2本長さの違うロープを足して伸縮ロープ。そうこうするうちに、3本のロープは1本になってしまう。
ここで、トーク。「私は初めてお招き頂きました。ありがとうございます。お伺いしましたところ、45回目だそうで、その間ずっと呼んでいただけなかったということなんですね!」などと言って会場を沸かせる。「先代の忠告に、あなたは黙ってやればいいのよ。というのがありました。」とも言った。紅白縦縞のシルクを取り上げる。これが横縞になるという現象を見せる。「今日は昼間は埼玉県の所沢というところでやりましたが、全く驚いてくださらないんですよ。文化の低いところで演技するというのはやりにくいことなんですよ!」などといってとぼけてみせる。最後に、紅白縞模様のシルクは白地に赤で「寿」と書かれたシルクに変化する。「私たちはお客様を笑わせたと思っていい気になっていると、実はお客様に笑われている場合がありますので、注意しなければいけません。」などと言い、会場を大いに沸かせたりもした。
シルクプロダクション。紅白のシルクが左右の手から次々に出現する。もみ出すといった感じで、少しずつ手からシルクが生まれ出る様子は女性らしく美しい。出現したたくさんのシルクをかごから集めると、中からファンテンシルクが出現する。さらにこのシルクをひとふりすると、投げテープが広がる。テープの1部を取り、コップの水につけて扇であおぐと、紙吹雪となって舞台いっぱいに散ってゆく。
当日、コンテストの前に行われた宴会で挨拶されたすみえさんは、私の小さい頃の記憶の中の「すみえさん」とほとんど変わっておられないことにまず驚いた。しかし、ステージにぴっと立たれたそのご様子は日本奇術協会会長としての貫禄十分と感じられた。はじめてお会いしたのは、私が9歳の頃にNETテレビ(現テレビ朝日)の昼の番組に出演したとき、すみえさんが審査員をして下さったのだが、それが最初だと思う。1973年頃のことだろう。その後、例えば読売ランドの屋外ステージのショーなどがあると、そのためだけに遊園地の入場料を払って行った記憶がある。今の「おっかけ」みたいなものかもしれない。当時は花島セツ子さんらが後見をされていて、縄抜けなどをされていたことを今でもはっきり思い出す。アマチュアマジシャンのように凝ったことは一切なさらないけれど、お客さんが十分納得する、そして、「こりゃすごいや!」と思わせる見せ方、すなわち「芸」が見る者の感動を呼び起こすのであろう。トークがこれまた最高に楽しく、ああ見てよかったな、と幸せな気分にさせてくれる明るいショーとなっていた。今後ますますのご活躍を期待したい。
Copyright © 2000 Shigeru Tashiro & Yasuo Nakamura. All rights reserved.
Update: 2000/4/4