第44回テンヨ−マジックフェスティバル

* SHAPE OF MY HEART *

− 心のかたち −

日時:2002年9月8日(日) 昼の部 13:30〜16:20
会場: 三越劇場(日本橋三越本店6階)
主催:株式会社 テンヨー

Update: 2002/9/17


はじめに

毎年恒例の「テンヨーマジックフェスティバル」。最近は、昼と夜の2回公演制になりましたが、前売りチケットは即日で完売してしまうほどの盛況ぶりです。

今回のテーマは *SHAPE OF HEART* (心のかたち)

それでは早速、ショーの内容を私の感想とともに詳しくレポートしましょう。

オープニング

開演の2ベルが鳴って、舞台が明るくなると、上手袖から一人の男が顔を出します。黒ぶちメガネに帽子姿、この人は一体誰? と思っているとなにやらジャグリングを始めました。

そこへ、慌しく一人の女性が駆け込んできました。今日の司会を頼まれた彼女は、「日本橋の三越劇場って、日本橋駅からは遠くて、三越前っていう駅があるのよね・・・」と会場を沸かせます。

この2人は、今回の進行を務めたKajaさんと司会の大野ちかこさんでした。

Kajaさんは、マジック関係では、ほとんど知られていませんでしたが、クラウンカレッジジャパン卒業後、イギリス サーコメディアサーカススクールでサーカスを学び、その後イギリス・アイルランド・アラビア・ベルギー・ノルウェーなど世界各国で修行を積まれました。その確かな芸は、今回のマジックショーの観客を魅了しました。

大野ちかこさんは、舞台で活躍する役者さんで、NHK「ためしてガッテン!」にガッテンママとしてもレギュラー出演中です。テンヨーの鈴木徹さんが代表を務めるPMF (Pure Magic Factory) 1stライブ(2001年2月12日)やカズ・カタヤマさんの「不思議の国のSHOW TIME」シリーズにも出演するなど、最近マジック界にも知名度が上がってきました。

今回のマジックショーの成功は、この2人の起用によるところも大きく、ショーを一層楽しく盛り上げました。

高尾晃市

トップバッターは、高尾晃市さん。TBSテレビ「天までとどけ」でお馴染みの正平兄ちゃんとしても有名な役者さんです。

紙を張った大きな箱の中に電灯を入れ、中に何もないことを示します。しばらくして、手の影絵が現れ、徐々に大きくなり人間の形になります。そして、紙を破って演者が登場します。

感想;この作品は、カッパーフィールドのオープニングイリュージョンとして有名ですが、かなり影響を受けているようでした。

円形の籠に美女を入れ、何本もの剣で突き刺します。演者が籠に布を被せると美女が2人になって出現します。

感想:ジャングル風の舞台効果と戦闘服風の衣装がよくマッチしていました。表情がニコニコしすぎで、やや違和感がありました。

白いハンカチを結ぶと生き物のように動きまわる。BGMは、1999年に大ヒットしたRicky Martin"Livin' La Vida Loca"を使用。最後にハンカチは、客席に飛んでいき、三角形の軌跡を描いて演者の手元に戻ってきます。

感想:布の代わりに上着を使う演出は、高尾さんの工夫でしょうか。この演技は、昨年好評だったTV番組「マジック王国(2001/7/19)」でも観ました。

箱の中に演者が入り、助手が2本の長い丸棒を十字型に突き刺します。箱の上側に手が出ており、1本の棒を握ります。手が箱の中に隠れると、一瞬にして美女に変化。しばらくして、演者は客席より出現します。

感想:初めて見るイリュージョンでした。剣の代わりに、長い丸棒を使ったところが新しい趣向です。箱から手を出して、棒を握るところは面白い効果でした。客席からの出現のとき、客席後方位置でのアピールがなかったのは、惜しいところです。

五十嵐笑子

今年、成蹊大学を卒業した元学生マジシャン。タキシード姿でフラワーとハトのプロダクションを演じました。彼女は、今年のSAMジャパン札幌大会(8月24日〜25日)で日本奇術会賞を受賞しています。

感想:フラワーをテーマにした作品では、FISMで2位を受賞したYUMIさんが有名ですが、シルク、ミリフラ、ハトを組み合わせた独創的な手順でした。フィニッシュで赤いバラを出現させたところは、クライマックスとしては弱い印象でした。

高道夏美 法政大学奇術愛好会

インド風の衣装を身にまとい、軽やかに舞台に舞いながらのゾンビ・ボールの演技。

感想:イントロは、火からのボールの出現、最後は、空手でのフローティングから消失という非常に凝った手順でした。フローティング部分がやや長すぎる印象でしたが、爽やかな笑顔が魅力的な演者でした。

古山 光 (法政大学奇術愛好会)

中国風の衣装と羽根扇子を小道具に使い、舞台いっぱいに踊りながら演じるリングのアクト。彼女は、SAMジャパン札幌大会(8月24日〜25日)でステージ1位を受賞しています。

感想:昨年の関東大学奇術連盟秋の発表会で初めて見ましたが、一段と演技力が増した印象でした。手順も独創的で、素晴らしい演技でした。リングの後、音楽と照明が変わって、シルクのアクトも演じましたが、リングだけで終わった方が一層インパクトが強かったように思います。

Kaja

帽子を使ったトッパー・マーチンばりの爆笑アクト。その後、モップを使ったデビル・ステッキ、風船、ボールと盛りだくさんのジャグリング。

感想:海外で豊富な実演経験を持つだけあって、観客を楽しませるツボをしっかり身に付けている印象でした。テクニックも基礎がしっかりしていて、安定しており余裕を感じます。後で、インターネットで調べたところ、Kajaさんの正体は、横浜市在住の武井 実さんという32歳の方でした。メガネをとると、窪塚洋介似のハンサムな青年です。きっと女性ファンも増えたのではないでしょうか。

ごあいさつ 近藤 博 (株式会社テンヨ−代表取締役副社長)

近藤さんから、最近のトピックスの紹介がありました。

8月末のTV番組「ワンダフル」(TBS)の流行ものベストテンでマジックが第7位だったことを紹介し、「マジック新時代」を迎えたことを強調しました。

近藤さん曰く、マジックの3つの特徴は、

  1. 間口が広く、誰でも始められる。
  2. 中味が本格的
  3. エンターテイメントとしてのマジック

次に、新しい試みとしての2002年ジュニアマジシャンビデオコンテストの紹介。17歳以下の42組もの応募があり、第1回グランプリ受賞者は、東京都柏市の戸崎拓也さん(16才)に決定したことが報告されました。詳しくは、テンヨーホームページに掲載されています。

最後に、今年の5月16日〜18日までテキサスで開催された「マジックコレクターズ」のコンベンションで、ハワイ在住のテリー・ウォング氏により、「テンヨーのマジック」についてパワーポイントを使ったプレゼンテーションがあったことが紹介されました。

新製品紹介 高森 洋 (株式会社テンヨ−営業1部)

テンヨ−ディ−ラ−の高森 洋さんから、シルクセレナーデ(再製作版)の実演、その後、2003年新製品が紹介されました。

感想:新製品紹介を大型のスクリーンで実演したのはとてもよかったと思います。みな傑作ですが、私のお気に入りは、Wブロックミステリーでした。また、菅原茂氏の名作「シースルーカード」が復刻されたのも嬉しいニュースでした。私も以前購入したのですが、紛失してしまったため、買い直しました。

休憩(25分)

YASUYUKI

YASUYUKIさんとは、ナポレオンズのボナ植木師のこと。2年前のFISMリスボン大会で実演した、舞台で演じる「テーブルマジック」を再演しました。アシスタントはバニーガールスタイルの「マリ」さん。

感想:この演技は、1999年10月8日に世界マジック・フレンド・コンベンション(キャピトル東急ホテル)において、厚川昌男賞を受賞した作品と同じでした。今回は、アシスタントの美女「マリ」さんが花を添えました。

松旭斎正恵

初めに、舞台スクリーンに珍しい映像が放映されました。松旭斎天勝、天一、天二、天洋、天海など明治・大正・昭和初期の貴重な映像でした。中でも、大正14年に演じられた天勝一座のショーの記録は、とても興味深いものでした。

松旭斎正恵師が演じたのは、シルク、ハト、お化けハンカチ、美女出現イリュージョン、胡蝶の舞、20世紀シルク、マンモスシルクの出現、衣装替え、でした。

感想:十八番の「胡蝶の舞」は、いつ見ても素晴らしい芸です。2羽を舞わせるところが、特に見どころです。

セロ&ジェーン

2001年、ラスベガスで行われたシークフリード&ロイ ワールドマジック・セミナーにてグランプリを受賞した演技を再演。ファイア、タバコ、紙幣プロダクション、ファンカード、木の葉カード、電気スタンドとロープ。

感想:この演技は、昨年8月のマジックサークルスペシャル(東京国際フォーラムD501)でも観ましたが、素晴らしいアクトでした。特に「電気スタンドとロープ」の手順は、音楽、照明、小道具に工夫を凝らした独創的なものです。ショーの最後を飾るのに相応しい好演でした。

フィナーレ

出演者が一人づつ、再登場。来年の第45回大会は9月7日であることが発表されて閉幕しました。

終わりに

今回のショーは、一段と洗練された印象で、素晴らしい出来栄えでした。構成・演出を担当された鈴木徹氏に拍手を送りたいと思います。来年の大会も楽しみにしています。


■関連サイト

テンヨーマジックフェスティバルレポート(写真付き)、新製品紹介(実演ムービー付き)

■過去のショーレポート


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Update: 2002/9/17