Update: 2004/9/21
TBSテレビ系列が、2004年9月18日(土)に放送した「脳力探険クイズ!ホムクル」を見た感想です。
この番組では、残念なことにマジック界のトップシークレットの一つである「セカンドディール」が詳細に暴露されました。演じたのはウィザード・イン所属の遠藤大河という若手マジシャンです。また、緒川集人師は3年前の「不思議どっとテレビ。これマジ!?」 (2001年9月8日放送 )に続いて、再び「マッスルパス」を暴露しました。マジックテクニック世界最高の称号 Close-up Magician of the year を獲得した世界一のマジシャンという紹介。
2003年公開のアメリカ映画「シェイド」の中からカードのすり替えテクニックシーンを紹介。
ちなみに、番組では紹介されなかったが、ギャンブラーとしてトップの地位を狙う若き詐欺師の名前はヴァーノン。
空の手から1枚のコインの出現、消失。ポケットに移動。最後はジャンボコインに変化。
客の好きな数字のカードを4枚テーブルに置く。1枚のコインをカードでこすると消失。消えたコインは4枚のカードのどこにあるか客に聞くと、選んだカードの下に移動している。残った3枚のカードを開けるとその下には全てコインが現れる。
4枚のコインをテーブルマットの上に四角形に置き、2枚のカードをコインにかぶせるとコインが次々に移動し、最後は1箇所に集まる。この現象を左右二組のテーブルマットを使って同時に行う。最後は一瞬にコインが四方に戻る。
この後、「マッスルパス」の技法を暴露。 コインマジックには「マッスルパス」が欠かせないというナレーション。マッスルパスの飛距離を競う競技会の模様をビデオで紹介。
テーブルマジック日本ジュニアチャンピオンとして遠藤大河(19歳)氏が紹介される。
ハートのAを広げたカードの好きなところに客が戻す。よく混ぜた後、テーブルに1枚づつ置いていき、好きなところで客がストップをかける。次のカードを開けると、ハートのAが出てくる。
もう一度同じマジックをやった後、ゲストの客にタネを当てさせる。
あっさりと、2人のゲストがタネを見破ってしまう。
2つのヒントを出した後、「セカンドディール」の技法を暴露。 「人の目は動いているものに弱い」という大学教授の解説の後、スローモーションで種を明かす。さらには、トップカードを表向きにして、実際の動作を繰り返す。
好きなカードを客が抜いて覚え、元に戻す。よく混ぜた後、カットしたところから1枚目のAが現れる。さらにカットすると2枚目、次に3枚目、最後に4枚目のAが現れ、テーブルに並べられる。残りのカードを4つの山に分ける。4枚のAをファン状に取り上げ、指ではじくと1枚の裏向きのカードが現れ、表に返すと客の選んだカードである。「実はまだ終りではないんです」と言って、4つの山を順番に表向きにしてスプレッドすると、全てのカードの配列が2からKまで順序よく揃っている。
最近はマジック番組が非常に増え、多くの若手プロマジシャンが活躍している。特に「ふじいあきら」、「前田知洋」、「ヒロ・サカイ」、「RYOTA」、「高橋ヒロキ」といったクロースアップマジックを得意とする人たちの出演が目立つ。個性はそれぞれ違うが、彼らに共通しているのは、意味のない種明かしは一切なく、マジックの演技そのもので観客にアピールしている点である。
そんな中で、今回の二人の出演者のスタイルは、明らかに異端である。トータルのマジックパフォーマンスという観点からするとテクニックだけが前面に出ている感じで、実にバランスが悪い。テクニックはマジックの重要な要素の一つではあるが、それ以外の要素がいくつも欠けている印象である。
これだけであれば、特にコメントするまでもないが、テクニックのすごさを強調する目的でマジックの裏側にある技法を意図的に暴露している点は見苦しい。今回明かされた「マッスルパス」や「セカンドディール」は技法の中でも特殊な部類で、実際に使用しているマジシャンは多くはない。しかし、プロマジシャンの中には、その存在を観客に知られずに巧みに手順に組み込んでいる例が実在する。このようなマジシャンの共有財産ともいえるトップシークレットの一つを、自分だけの都合で公開する権利は誰にもないはずである。
ご存知のように、3年前に緒川集人師は、「サムタイ」と「クラシックフォース」をテレビで暴露して、日米マジック界から大きな批判を受けた。その後、彼は単身米国に渡り、世界各地のコンベンション出演や2003年に Close-up Magician of the year 2002 (The Academy of Magical Arts) を受賞するなど素晴らしい実績を上げていた。ある意味では、今回の出演は、新生・緒川集人を印象付ける絶好のチャンスだったかもしれない。しかし、彼はあえて別の道を選んでしまった。また、テレビ初出演?の若き遠藤大河氏は重い十字架を背負ってしまったのかもしれない。素晴らしいテクニックを持つ二人だけに、残念に思う。
2004年9月21日 中村 安夫
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Update: 2004/9/21