「マジック種明かし番組」問題

日本奇術界の対応

Update: 2003/9/19


はじめに

過去の対応については、「これまでの経緯」にまとめましたので、ここでは、最近(2001年5月以降)の動きについて紹介します。

■マジックメーリングリスト(MML)

2001年5月16日のNHK教育テレビ「天才てれびくん」での緒川集人氏による「サムタイ」の種明かしが報告されて以来、議論が沸騰し、NHKおよび緒川集人氏に直接抗議する人が何人も現れました。

その後、緒川集人氏は、他のウィザード・インのメンバーとともにMMLに入会しましたが、この件については、しばらく沈黙を続けていました。

一方、日本テレビが2001年6月16日(土)Masked Magician特番「噂の覆面マジシャンが禁断のトリック大暴露」を正式に発表したことから、話題の中心はMasked Magician問題に移りました。

2001年9月8日のテレビ朝日「不思議どっとテレビ。これマジ!?」での緒川集人氏による「クラシックフォース」等の基本技法の暴露に対して、多数の奇術愛好家から憤慨・非難の声が寄せられました。

9月17日、緒川集人氏より、「番組放映後の報告」と題して、番組の評価、番組のねらいについて発言がありました。「訓練によってだけ身につけることのできる基本的な技法を紹介し、マジックの奥深さを感じてもらいたい」という考え。

コメント:

このような考え方は、日本だけでなく世界のマジック界では、到底容認されないものです。この思想の背景には、緒川集人氏の所属するウィザード・インの経営方針が見え隠れしています。つまり、マジックの普及・啓蒙の名のもとに「マジック界の共有財産」を利用して、自らのビジネス拡大を図ろうという動きです。

その後、議論は発展して、ウィザード・インのマジック観が問われ始めました。ウィザード・インは、IBM/SAMの倫理規程に従っているか否かというものです。

一方、9月下旬に種明かし問題に関して、ウィザード・イン柳田昌宏氏とマジックキャッスル幹部との会談が持たれたと伝えられています。また、水面下では、日米の多数の奇術家の間で本件に関する意見交換がなされています。

2001年10月12日(金)、小谷純司氏より、マジックキャッスルのミルト・ラーセン氏と柳田氏の会談内容が発表されました。また、マジックキャッスルの倫理規程およびミルト・ラーセン氏ブルース・サーボン氏の見解も公表されました。

2001年10月18日(木)、WAM名誉会長のウォルター氏の見解が公表されました。

2001年10月21日(日)、私が「緒川集人氏のTVにおける種明かしの主張と反論」と題する論文を発表しました。緒川集人氏の主張に関しては、MMLで発言された内容に沿ってできるだけ忠実に要約しました。また、反論の根拠に記した資料は、ホームページからすべてリンクを張っています。緒川集人さんからの反論および多くの方々からのご意見・ご感想を歓迎します。

2001年10月23日(火)、グレート・トムソーニ氏のパム夫人からウィザード・イン柳田氏への強い抗議のメールが公表されました。これは、ウィザード・イン掲示板において、柳田氏が「バレンチノの師匠である、グレート・トムソーニ」という失言をしたためです。その後、柳田氏は非を認め、発言を削除しました。

2001年10月23日(火)、WAM会長のアッブ・ディクソン氏の見解が公表されました。

2001年10月24日(水)、マジックキャッスルの見解が発表されました。これは、ミルト・ラーセン氏からWAM名誉会長ウォルター氏に送られたメールを小谷純司氏が公表したものです。

■ウィザード・インが運営する電子掲示板(BBS)

2001年5月下旬

渦中の人、緒川集人氏の所属するウィザード・インが運営する電子掲示板(BBS):室長不在のTHE FULL-CONTACTでは、緒川集人氏に直接抗議した人たちが書き込み始めました。

しかし、カードのサイズ問題やウィザード・イン経営者である柳田昌宏氏個人の過去の噂などに話題が拡散し、緒川集人氏の「サムタイ」種明かし問題については、議論の進展が見られませんでした。

緒川集人氏の「技法」種明かし問題に関連して、柳田昌宏氏が「啓蒙と種明かし」と題する見解を発表しました。(2001年9月17日)

2001年9月下旬のウィザード・イン柳田昌宏氏とマジックキャッスル幹部との会談内容については、しばらく詳しい報告が掲載されませんでした。

2001年10月上旬、緒川集人・秋元正・スターたなか氏がマジックキャッスルに行き、今回の緒川問題に対して、マジックキャッスル側と話し合いをしました。

2001年10月18日、柳田氏が「アンケートの結果、80パーセントのマジシャンが番組に対して肯定的」とする途中経過を発表しました。具体的な調査方法、内容が報告されていないため、詳細な報告を求める声が高まりました。

2001年10月26日、秋元正氏よりマジックキャッスルでの会談内容の概要とアンケート結果が公表されました。

コメント:(2002年9月7日更新)

ウィザード・インとマジックキャッスル幹部との会談内容については、その後「マジックキャッスルの見解」が公表されましたので、読み比べていただけると真相が見えてきます。

マジックキャッスルでのアンケート結果については、柳田氏の主張した「80%のマジシャンが賛成」という根拠が全く不明です。

「テレビでの暴露によってマジシャンはダメージを与えられると思いますか?」という質問に対して、

  • A:マジックのためになる --- 1人
  • B:何も起こらない--- 0人
  • C:一部のマジシャンはダメージを受ける --- 2人
  • D:深刻なダメージを受ける --- 3人

という結果であり、全く逆の結果になっています。その後、柳田氏はこの件に関して、一切コメントしなくなってしまいました。

また、緒川氏のサムタイ、クラシックフォースの種明かしに関しては、明らかに問題視する人が含まれていました。

アンケート結果の中で、ウィット・ヘイデン氏のコメントの肉声も公開されました。しかし、合計20MBの巨大な音声ファイルになっており、ダウンロードに長い時間がかかります。私も一つだけ再生して聞いてみましたが、よく聞き取れません。何故、話の内容のポイントを日本語で書かないのでしょうか?ホームページ上には、「日本語訳が出来次第、アップします。」と記載されていますが、1年近くたっても日本語訳は公開されませんでした。

さて、上記サイト上で、秋元正氏がタネ明かしに関して#2(インターネットにおけるマジック事情という論文を発表しています。

一部を引用すると、私のサイトとマジェイアさんのサイトを批判した下記のようなくだりがありました。

「現在、「スティングのマジックの玉手箱」や、「マジェイアの魔法都市案内」ではかなり本格的にタネ明かし問題について文章を掲げてあり、個人名、団体名も明記されていますが、その内容はかなり偏ったものであると言わざるを得ません。」

内容が偏っているかどうかは、読者のみなさんのご判断にお任せしましょう。

さて、「室長不在のTHE FULL-CONTACT」(BBS)における種明かし論議は、2001年11月末頃に終結しました。インターネット上で多くの事実が明らかになってしまったため、もはや議論の意味が無くなったとも考えられます。

■日本奇術協会(JPMA)

2001年5月下旬

過去のマジック種明かし番組に対して、毅然とした対応をみせていた日本奇術協会(JPMA)は、今回の「サムタイ種明かし問題」と「Masked Magician問題」については、平静を保っているように見えます。

JPMAホームページの電子掲示板によると、ケン正木師がNHKに対し、番組の趣旨、演出内容を確認する問い合わせをしたことが報告されています(6月1日)。

番組担当ディレクターの回答では、「製作意図はネタばらしではなく、マジックに興味を持ち、マジックを始める子供が誕生することが最終目標」とのことでした。しかし、この目的のためには、「サムタイ」という演目は不適当であり、もっと趣旨にそった演目を選択できたはずです。この点、日本奇術協会の対応には首を傾げざるを得ません。

Masked Magician問題については、米国およびブラジル奇術界でも大問題になった国際的問題であり、海外奇術界では日本がどう対応するか大きな関心を持って注視しています。

日本奇術協会(JPMA)は、「奇術に関する公演を開催するとともに、次代を担う後身の育成をはじめ、諸外国と奇術の国際交流など、奇術の振興を図る目的に設立された」社団法人です。

今回の問題に対して、どう考えるかという点について、明確な意思表示が求められています。

しかし、今のところ、目立った動きは伝わってきていません。(6月10日)

日本奇術協会の北見マキ会長から、「奇術師への配慮を欠いた番組担当者に対して」という声明が発表されました。(6月13日、JPMAホームページ掲示板

これは、WAMおよびIBM/SAM倫理規程と同一見解と思われます。「奇術の種を明かすということは、職業奇術師の生活権の侵害にあたるという判断を下さざるを得ません。」というコメントは、極めて注目すべき発言です。

ダーク広和師より、6月22日(金)に臨時役員会が開催されることが発表されました。(2001年6月15日)

議題

1. サムタイの種明かしについて(NHK)
2. マスクマジシャンによる種明かしについて(日本テレビ)

瞳 ナナ師が、ネタばらし番組が氾濫している現状に対して、遺憾表明。(6月19日)

ダーク広和師が、一般の人からの悲しいメールを紹介。(6月19日)

マジック中島師が、投稿削除の理由を説明。(6月19日)

北見 伸師が、種明かし番組に対する見解表明。(6月20日)

マジック中島師が、プロマジシャンに向けてのメッセージ発信。(6月20日)

北見マキ師が、テレビ番組の種明かし問題について声明発表。(6月23日)

2001.6.22の臨時役員会の報告が日本奇術協会のホームページで発表されました。(6月26日)

「テレビによる種明かし抗議賛同のお願い」と題して、日本奇術協会の公式見解とともに、奇術愛好家とプロマジシャンに対して、テレビ局の番組担当者とスポンサー宛ての抗議投書を促す呼びかけがなされました。同時に、文例と送付先リスト(日本テレビ、NHK、スポンサー13社)も公表されました。

2001年7月3日(火)、ダーク広和師が日本奇術協会のホームページで下記のような注目すべき報告を行いました。

7月2日(月)、日本奇術協会の抗議に対し、NHK教育テレビ「天才テレビくん」のチーフプロデューサが北見マキ会長、ケン正木師、ダーク広和師と会談した。その結果、NHK側は日本奇術協会の主張に理解を示し、今後「サムタイ」の種明かし部分の再放送をしないことを約束した。また、会談の合意事項を文書で日本奇術協会に提出することを了承した。

コメント:

「サムタイ」の第一人者である北見マキ師自らが、NHKのチーフプロデューサに対し、種明かしの問題性を説明し、テレビ局がその主張を受け入れたことは、非常に意義深い出来事である。これで、「サムタイ種明かし問題」は一応の決着がついたと考えられる。

一方、もう一つの「マスクマジシャン種明かし問題」は、日本テレビが7月2日に続編を放映し、さらに今秋のマスクマジシャン再来日を発表したことから、事態は全く進展していない。今後の日本奇術協会の対応が改めて注目される。

2001年7月5日(木)、北見マキ師が自身のホームページの掲示板で、「サムタイの件に関して」と題する見解を発表しました。サムタイの歴史および師自身の考え方が明快に書かれていますので興味のある方はご覧ください。

2001年9月14日(金)、ヒロ・サカイ師が日本奇術協会のホームページで「種明かしの基準となる考え」と題する見解を発表しました。

2001年10月12日(金)、マジック中島師が、日本奇術協会のホームページで、10月11日放映の「噂の覆面マジシャンVSプリンセス天功超魔術暴露バトル第2章」(日本テレビ系)に対して、強い抗議声明を発表しました。

2001年11月8日(木)、LUKEアキラ師が、日本奇術協会のホームページで、種明かし番組に関する見解を発表しました。

2003年7月9日(水)、協会理事の佐藤元一師が出演した番組における種明しに関して、日本奇術協会のホームページに抗議文が寄せられました。

これは、7月8日(火)深夜24:28-24:58に放送された日本テレビ系(中京テレビ製作)「ルートエフ」の中で、「フォース」、「ダブルリフト」、「アンビシャスカード」等が解説されたことによるものです。

コメント:(2003/7/10)

2年前に他団体の緒川集人師が「サムタイ」と「クラシックフォース」をTV番組で種明しした時の教訓が生かされていないのが残念である。今回は、日本奇術協会理事の立場である佐藤元一師が出演した番組だけに協会の対応が注目される。

2003年7月11日(金)、日本奇術協会のホームページでダーク広和師より、「佐藤元一氏のテレビにおける種明かしについて」状況報告がありました。

2003年7月11日(金)、北見マキ師のホームページの掲示板に寄せられた抗議文に対する回答と謝罪がありました。

コメント:(2003/7/12)

日本奇術協会の素早い対応と北見マキ師の個人的見解発表は、とても良いと思う。

2003年7月15日(火)、日本奇術協会のホームページでダーク広和師より、14日に開催された理事会の報告がありました。以下は、佐藤元一師の釈明をダーク広和師が要約した内容です。

  (掲示板からの引用)

2003年7月15日(火)、佐藤元一師によるルートエフにおける種明かし手記が掲載されました。

コメント:(2003/7/18)

佐藤元一師の説明では、テレビ局側が師の意向に反して、技法の種明しをしてしまったらしい。このため、佐藤師は、番組放送後の7月9日に中京テレビのスタッフに抗議を申し入れたという。これが真実だとすると、佐藤師は中京テレビに対して、慰謝料の請求が出来るようだ。

一方、協会掲示板に投稿された、別の証言では、佐藤師は中京テレビ側に種明しを容認するような発言を打ち合わせ時にしていたという。

真相は、関係者のみ知るということだろう。現状では、これ以上の推測は控えたい。

なお、日本奇術協会では、7月29日(火)に臨時総会を開催することを発表した。(7月16日)

2003年7月30日(水)、日本奇術協会のホームページでシステム企画委員の方より、29日に開催された臨時総会の報告がありました。

コメント:(2003/7/31)

今回の問題は、日本奇術協会にとって、対応が極めて難しい内容であるが、多くの奇術関係者が注目している話題なので、明快な結果発表を期待したい。

2003年8月11日(月)、日本奇術協会のホームページで藤山新太郎師が、佐藤元一氏のタネ明かし問題に関してと題する見解を発表しました。

2003年8月24日(日)、日本奇術協会のホームページに、種明かし問題専用掲示板が設置されました。これは、奇術協会に寄せられた意見が採用されて新設されたものです。

2003年9月11日(木)、日本奇術協会の理事役員会が開催されました。

コメント:(2003/9/19):

理事役員会の結果報告が遅れているのは何故だろうか。どのような結果であったにせよ、何らかの状況報告を早くすべきだと思う。


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